えぴ6

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蒸気で曇る眼鏡を汗で滑る額にずらす。 実はかなり…ハマってしまった♡ 人生で経験したことないくらい気持ちよくて頭では毎日通うなんて迷惑だと思いつつも期待してコンビニに車を停めていると、ニコニコっと満面の笑顔の英護が窓をノックする優しさに甘んじている。 「はっ…はっ…」 数人のタフネスに英護は若さで太刀打ちしているが、心地よい疲労に身を任せて数人の胸に頭を預ける。その光景がたまらない。 「え、英護…」 「ん…?なに?」 「っき…気持ち、よかった…♡」 「んふ…俺も。」 そうして触れるだけのくすぐったいキスを繰り返す。 「週末はまたホテル行きましょ、そうだデートもしたいっス。」 「ででで、デート!?」 創作の世界のデートは知っているが体験したことは1度もない。そうして、そういう時に限ってベストなデートコースなんて1つも出てこない、だがここは年上の私がリードしなければという1種の使命感すらある。 「俺とじゃ嫌です…?」 「~~~~っ!」 仔猫の鳴くような甘く、くすぐったい声で拗ねられると断ることなんて出来ない…私には出来ないッッ。 「い、いいとも…その、どこに行きたい?」 こういう場面で相手にリクエストを問うのは正解か?本当に知識がなくて半分パニックになっている。遊園地か?それとも映画館か? 「やった…!嬉しっ」 肯定の返事を受け取ると英護は無邪気に微笑む。声もいいが顔もいいなこいつ…。 「ん、でも遠出はしなくていいんス、夜のイチャイチャに時間かけたいから…飯食って、一緒に歩いて、あとはホテルで、ね♪」 さすがの数人でも含みを持たせたその意味はなんとなく理解して頬の上辺りが熱くなる。 誤魔化しの意味を込めてゆるり顔を背けた。 「そ、そうか…食事は何がいい?イタリアンか?評判のいいフランス料理か?」 「焼肉!今からでもいいくらいです焼肉行きましょ!焼肉食べたいっス!!!」 …分かりやすく「男の子」だなあ、その方が助かるし、期待に満ちた笑顔がかわいいな。 「分かった、うまいところを探しておこう。近場で良ければ今からでもいいぞ。」 「マジっスか!探してくれるなんて安堂さん優しいな~楽しみ!あ、今からスか?めちゃくちゃ魅力的な申し出なんスけど給料前だから金なくて…」 「なんだそれくらい、出してやるさ。」 「んー、いいっス!焼肉はデートの時の楽しみで!」 グウキュルル… 金欠は嘘偽りないらしい、ナイスタイミングで英護の腹が鳴り、その顔がみるみる赤く染まる。 「いやあの、これはその…」 「…近くの牛丼屋でいいか?」 「…イキマス」 お互いの体液を拭いて掃除したあと、私の車で牛丼屋を目指した。 余談だが英護の食べ方は決して上品ではないものの「いただきます」「ごちそうさまです」はちゃんと頭を下げるし、何より幸せそうな笑顔で食べる様子が気持ちいい。 遠慮して遠慮して、注文するのをためらっていたので特盛を頼むと手を握って感謝された。彼はペロリと完食したが、見てるだけで腹一杯になったぞ…若さってすごい。
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