えぴ7

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生徒にも常々、5分前行動を心がけなさいと教える立場である教師の数人がデートに遅刻しては笑い話にもならない。 交通法を守りながら安全に車をぶっ飛ばしていつものコンビニ前に駐車する。 良かった、5分2秒前。まだ英護は来ていない。 「……。」 慌てたせいだろうか前髪が少し乱れてるな…バックミラーを頼りに髪を整える。 「……。」 しかし、早めにつくと今度は別の心配が発生するな…。約束は今日じゃなかったか?とか時間を間違えたか?とか彼は来ないんじゃないか?と不安が尽きない。心地いい秋の天気とは裏腹に数人の心には暗雲が立ち込める。 電話した方がいいのか?いや嫌われてたら… こんこん 「!」 携帯を凝視していたら、運転席の窓にノック。ラフな私服姿の英護がご機嫌そうに笑っていた。すぐに鍵を開けると慣れた足取りで英護は助手席のドアを開けてシートに座る。 「遅れてすみません、業者と電話してたら時間かかっちゃって。」 謝る時は申し訳なさそうな顔をする英護、よく観察すると息も乱れており駅からかなり走ったのだろう。 「いやいや、私も今着いたばかりだ。」 「良かった、そうそう安堂さんのトランクケースのボディパーツ、届きましたよ!」 しかも私の依頼品の電話だったのか、それこそこちらが申し訳ないやらありがたいやらだ。 「ありがとう、古い型だったから苦労しただろう?また戻ってくるのが待ち遠しいよ。」 「あとはちょちょいと……いや、掃除とか完璧にしてお返ししますから。もう少しお待たせしても大丈夫ですか?」 かなり時間がかかるんだな…だが専門的なことは専門家に任せるのが吉だ、流されるまま受け入れよう。 「よろしく頼む。」 「はい!任せてください!」 英護は安心したように笑ってみせた。 待たせることがそんなに心配だったのか、修学旅行は1ヶ月先だから間に合うだろう。 「それじゃ!安堂さんっ!焼肉行きましょ!!」 おお、テンション高いな。遊園地に行く子供並みにはしゃいでる。 「ああ、近辺をくまなく探したのだがこの店はどうだ?レビューも写真もかなり質が高い。」 「そこ最近出来た店っスよね?お客さんから1回聞いたことあるけど美味しいって言ってて気になってたんス!今日行けるなんて嬉しいなっ!」 ふぅ、3日間夜通し調べた甲斐があったな…これだけ喜んでもらえれば努力も報われる。まあまだ、味は分からんがな。 「それじゃ出発する。」 「了解!キャプテン!」 キャプテンか…いい響きだ。 数人は愛車のキーを回し、エンジンを唸らせた。
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