えぴ8

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英護のオススメするお菓子をいくつか購入して、紙袋を携えたまま気ままにショッピングモールを歩いてまわった。 自分1人の時は真っ直ぐ目的地に行って、通った道そっくりそのまま踏んで帰る。 こうして目的もなくブラブラとするのは時間の無駄だと避けていたが、2人だとこんなに楽しいものか?それとも隣に元気な英護がいてくれるから…? 「あ、もう14時っスよ、早いですね。」 「もうそんな時間か?」 時間管理に真面目な数人も思わず腕時計を二度見した。定期的に腕時計を見るのが癖なのに、それさえ忘れるとは自分が1番驚きだった。時刻を言われるとつい「次の予定はなんだっけ?」と焦るものだが、次の予定は… 「休日っスからね、早めにホテルに行かないといい部屋埋まっちゃいますよ?」 「こ、こら、声が大きいっ…」 誰1人こちらを向いていないのに数人は顔を赤くさせ額に汗粒を滲ませ、コソコソと注意する。 「ふは、反応可愛いっスね。ここでキスしてあげましょうか?」 「ききききっ…!?お、大人をからかうんじゃない…!」 「ふへへ、ごめんなさーい。」 全く、ちょっと想像しちゃったじゃないか! 教師モードでなんとか理性を保ち、深呼吸をする。これからまたホテルで英護と… 「安堂さん、逃げるなら今のうちですよ?部屋に入ったら鍵、閉めますから。ずっとベッドで2人きりっスよ。」 「ーーーーーーっ!!」 時々、彼が人並み外れたイケボの持ち主であることを忘れてしまう。だがこうしてスケベなセリフを聞くと耳より脳が反応してしまい、腰がゾクゾクっと痺れた。足腰に力が入らず、カクンと膝が折れてその場にへたりこんでしまう。 「あ、逃げないならこのままお持ち帰りしますね。覚悟してくださいね?俺、今日超ムラムラしてるっスから。」 ああこの平穏な休日…行き交う人たちの誰が、こんな爽やかな青年がこんなに破廉恥な言葉をツラツラ語ってると信じられるだろう?数人が顔を赤くさせて唇を震わせていると、半ば引きずられる形で駐車場へと向かっていった。
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