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えぴ9
聞こえず無視されたら言わなくてもいいかな、と自分ルールを制定しようとしたが、英護はすぐに振り返った。
「ん?なんスか?」
進行を阻まれたというのに全く気にしないようすの笑顔が申し訳なくて胸が痛い。
だが引き留めてしまった以上「何もない」と返すのも悪いし、そうして駆け引きできるほど数人は狡猾じゃないし何よりパニックだった。額の汗が顎を伝うのが過敏に分かる。
「あ、の…その、だな…」
「もしかしてもう待ちきれないとか?安堂さんったらエッチだな。」
なぜ嬉しそうなんだ。
「いや、そうじゃ…なくてだな…」
すると英護の笑顔が消えて心配そうに眉を垂れる。
「…じゃあもしかして、やっぱりヤりたくなくなったとか?俺がはしゃぎすぎてせっつくから、ガキっぽくてイヤになりました?」
声色も合わせて英護の表情がコロコロ変わるのは興味深いが、このままだと誤解させたまま傷つけてしまう。覚悟を決めろ数人、男だろ…!
今にも破裂しそうな心臓を押さえ、数人は意を決して深呼吸した。
「そうじゃない…私の…秘密を聞いてくれ」
「…分かりました。」
嫌われたわけじゃない、と安堵した英護は話がなんだろう、と目を丸くさせながらも数人をゆっくり扉から遠ざけてベッドの方に連れ歩いた。
「初めての時も服は脱ぎたくないって言ってたっスよね?」
「あ、ああ…」
素直に連れていかれる数人をベッドの端に座らせ、英護はその正面に膝をついて見上げた。
「言いたくないなら、見せたくないなら無理しないでください。それでも安堂さんが俺に見せてもいいっていうなら、絶対笑ったり否定したりしませんから。」
「……っ!」
ああ、私はその声を、言葉を望んでいたのだろう。緊張して震えて重くなった心がフワリと軽くなった。彼の真剣な目を見れば嘘じゃないことくらい容易く分かったのだ。
「分かった、見てくれ…」
リラックスした数人は自ら白シャツのボタンをぷつりぷつりと外してゆく…。
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