えぴ9

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「ん…」 パカ、と目を開けて初めて数人は自分が気を失っていたことに気づいた。 頭がポーッとする…ベッドに埋め込まれたデジタル時計を見ても何分気絶してたのか分からず。 だが自分の体を見下ろせば、胸元にかけられた精…体液をティッシュで拭いてもらってるものの名残がある。なんか、両方にかけられた跡があるような…英護はシャワーだろうか? ずれたメガネをかけ直し、ボーッとしながらめちゃくちゃに愛撫されたちくびを見つめる。まだ赤くなってて…じんじんする。 こんなに気持ちいい思いをしたのは生まれて初めてだった。同時になんだか「ぼいす」を裏切ったような、そんな自己嫌悪にも陥る。 「あれ?今日は早かったスね。」 シャワー室の方から水もしたたる声のいい男が出てきた。今日も上裸だが、やはりイケメンにのみ許される破廉恥さだ。 スッキリとした顔でニコニコしている英護は今にも落ちそうな腰巻きタオルに構うことなく歩み、ベッドサイドの数人の隣に腰かけると、挨拶のきすをした。 「安堂さんめちゃめちゃ可愛かったっス。」 「や、やめなさいこんなおじさんに…」 かわいいなんて褒められたことに動揺して教師モードで注意をしても英護には効かない。 数人がやんわり腰を引いても瞬時にゼロ距離までくっついてくる。 それから急に真面目な顔となり、しっかり安堂と向き合った。 「安堂さん、打ち明けるのすごく恥ずかしかったでしょう?でも勇気を出してくれてありがとうございます。」 「ム、うむ…」 「それでね?安堂さん、俺決めました。2つ。」 「ふたつ…?」 教えて良かったと緩んだ心に引っかかる「2つ」とは。英護はすぐに説明してくれた。 「安堂さん、俺と付き合ってください。」 「………っ!」 ここで数人が「ああいいぞ、どこへ行きたいんだ」と典型的なネタをかまさなかったのは、英護の目がガチだったからだ。本気真面目ガチに、教師のおっさんに告白してる。 その言葉を聞くまでそんな風に言われるなんて思ってもいなかったはずなのにその声を待ち望んでいたかのように心が揺れ動く。 「い、いのか…君よりずいぶん年上だぞ?それに私から君へ奉仕出来たこともない…自分で言うのも虚しいがつまらない人間だ、それなのにどうして…?」 告白の返事をしようと思ったのに気づけば質問していた。今さら英護が詐欺に引っかけたりヒドイことするとはどうしても思えないが、先述の通り自分は面白味に欠ける有象無象の存在だ。若くて未来ある青年から告白されると喜びよりも不安が先立つ。 まるでその返答まで予測していたかのように英護は答えた。 「しょうがないっスよ、惚れた弱みです。」 それで全て説明ついてしまうのか…?完全に納得することは出来なかったが、英護に告白されたのは正直に嬉しかった。 「う、ウム…よろしく、頼む。」 もっとムードある言葉を選びたかったが、いかんせん数人の脳内はプチパニックだった。 しかしそんな返事でも英護は心から嬉しそうにはにかんでみせた。 「やった…っ!嬉しい!安堂さん、よろしくお願いします!」 「わわっ…」 熱い抱擁、というかほぼ体当たりで抱きつかれた。なんとかのけ反らずに受け止めきれてポンポンと頭を撫でるが、まだ両手放しで喜ぶわけにもいかない、と英護に尋ねた。 「2つ、と言っていたよな?もう1つは…?」
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