えぴ10

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えぴ10

数人の胸の中で子犬のように甘えてじゃれていた英護が、ハッと我に返って顔を上げた。 「そうそう、安堂さんの学校の修学旅行っていつですか?」 「ん?14から18日までだが…?」 「すみませんちょっとボスに電話しますね?」 「ああどうぞ。」 会話の途中でかなり違和感あったがビジネスマンの性だろうか、電話を遮ることは出来ず即答した。 上裸の英護がスマホを携帯してるはずはなく、ベッドの足元にまとめられた衣服から漁って取り出した。こちらに向かって軽く会釈すると背を向け、電話をかけたようだ。 「もしもしボスですか?佐崎です。ええ、遅い時間にすみません。先週希望した三連休の日程、ずらしてもらうことって可能ですか?え!いいんスかありがとうございます!はい、はい、ええ、15、16、17にしてもらえます?わ!ボスあいしてる!はい!明日のショーケース俺が全力でやります!はい!はーい!お疲れ様です、お休みなさーい!」 終始、ポケーと話を聞くことしか出来なかった数人。あまり理解が追い付いていないが成功した、ということでいいのだろうか? それはわざわざ聞かなくても満面の笑みでガッツポーズする英護を見れば分かった。 「やった…!マジ寸前!ギリギリでした!はー…良かったぁ!」 「お、おめでとう?」 「あっ説明しなくてすんません。俺安堂さんの修学旅行についていっていいスか?」 「え、えええ!?」 全く予想外の答えにメガネまでずっこけたが、今電話してただろう?ダメなんて言ったらボスにも彼にも悪いじゃないか!まさかそこまで計算した上で…?英護の表情からは読み取れない。 「そういうの重いですか?前にも話したけど俺、旅行大好きなんスよ。バイトの俺に、よくボスは連休を取らせてくれるんスけど今回は安堂さんと行きたいなってずっと考えてて…あ!もちろん安堂さんは仕事スから邪魔しないよう気をつけますよ!空き時間に1分でも構ってくれたら俺、幸せです。」 「む、む…うむむ…うううむ…」 本気で悩む数人。頭痛くなってきた。 大前提として、嫌なわけじゃない。 だが自分は大切な教え子を預かる教師という立場であり、修学旅行は遊びではない。しかしそれは生真面目すぎるだろうか?生徒の自由時間の間、私にも空き時間はあるし、それをプライベートと捉えてもいいだろうか?いや、やはり聖職者として遊び半分は…むむむ 「知らない土地で仕事中、いっぱい乳首いじられらるのってエッチですよね?」 「よし、許可しよう。」 即!決!仕方ない、ちくびの快感には抗えない…。 「わーい♪よろしくお願いします!楽しみだなあ、今月は節約しないとっ。安堂さんをショボい宿には呼べませんからね!」 「それで無理をして体調を壊したらこの話はなかったことにするからな。」 「う…意外としっかりしてる…はあい。」 ほんの10分で決まった2つの約束が、まだ夢のようで信じられない、本当に現実か?私が望んだ妄想かもしれない…。 「ちょっと頬をつねってくれないか?」 「?ほい。」 「んぐうううっ♡」 つねるのは、ソッチじゃなーい!! どうやら夢や幻じゃなかったらしい…
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