えぴ11

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「…、…はっ…、…は…」 『…安堂さん?』 小さな吐息を聞き漏らすまいと英護の声も小声になった。彼はまだ気づいていない。数人がベッドに四つん這いになり、胸で自慰する声を英護に聞いて貰おうと通話を繋いでることに。 「んんっ…ぐ、…、ふ、ふ、っ…ふう…」 人に聞かれてると思うと緊張して脳が沸騰して蒸発しそうだ。それでも始めてしまった手は止まらない。「ぼいす」の声を聴いてる時のように尖った胸の先を摘まみ、スリスリとすり潰す。甘イキしたばかりだからか、腰が勝手にびくびく跳ねている。 『…………。』 「あ、はあっ…♡はあ、あ、あんっ♡」 『!安堂さん、もしかして…!』 数人の練習のたまものである甘い声を聞いて初めて気がついた英護は、言葉を発そうとして飲み込む。今は吐息の1つさえ聞き漏らすまいと口に手を当てたほどだ。 ああ、英護が今、電話の向こうで私の恥ずかしい声を、淫らな声を、胸で感じてる声を聞いてくれてる…それって気が狂いそうなほど、興奮するっ…! 「はあはあっ♡はあ、あン…っああん…♡」 『はっ…安堂さんっ…』 電話越しで、何かを開くジッパーの音が微かにしたと思うとクチクチいやらしい水音がした。同じ男だ、数人もそれが何か分かっていた。 「んう、ふっ…♡うううん、んんんぅ♡」 『安堂さん、安堂さんっ…あんたって人は、俺の股間を爆発させる気っスか…!?エロすぎておかしくなりそう、もっと聞かせて…!』 そう口早に呟く英護の声は、やはり数人の声の邪魔をしないよう小声だった。またその声が数人の性的興奮を過剰に促す。 悩ましげに眉をひそめ、腰をくねらせながら赤くなった胸の先をカリカリぴんぴん、コリコリと刺激を変えて快感を楽しむ。 「んああっ♡あ、あ、出る…っ出そう、出そうっ…♡」 『安堂さん、呼んで、俺の名前呼びながらイッて、イケ、イケ、イケ…っ』 「はあはあっ、ぼ………」 『安堂さん…?』 浮わついた頭がハッと覚めたのはザアッと血の気が引いたからだろう。今自分は何を言おうとした?と気づかなかったフリももう遅い。背筋に冷たい汗が伝うのを感じながらも、英護を待たせていると冷静な理性が警鐘を鳴らした。 「英護、英護、えいごっ…♡んんっえいごぉっ…♡」 『くっ…明日絶対店に来てくださいよ!ドヘンタイなあんたの乳首、噛んで吸って扱いて…っん、ク…っイカせる、ぜってー泣かすっ…!ん、ンンッ…!』 「ーーーーーーっ♡んんんんっ♡」 1度冷めた体だが、英護の熱のこもったすけべな声を聞いたら一瞬で点火して、つられて絶頂してしまった。喜びにメガネは傾き、口角は幸せに上がったままヒクヒク震えてヨダレが垂れた。早く明日になって欲しい…。 『はー…はー…、じゃ、じゃあまた明日…』 「あ、ああそれじゃおやすみ…」 お互い恥ずかしくなってそそくさと電話を切った。再び頭が冷静になると、胸の内は「ぼいす」にも英護にも罪悪感でいっぱいだった。 どうしてそうなったか、もう一度思い出すが、結論は最初から分かっていた。 私は一瞬、英護のことを「ぼいす」だと思った…?確かに話し方や声が異常にカッコいいところは似てるが、声質が違う…はずだ。 でも電話してる時の声は「ぼいす」にかなり似てたような気がする…空気の振動がそう勘違いさせただけ? 「………?」 結局、そのまま夜を明かしても分からなかった。だが少なくともお付き合いしてるのは英護だ、彼に一筋であるべきだ。 「………。」 しばらく、考える時間が必要だと判断した数人は迷いながらもタブレットの電源を落とし、引き出しに仕舞った。
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