えぴ12

3/3
前へ
/411ページ
次へ
自分の不注意でボディを破壊してしまったキャリーケースは、購入した日を思い出すほどピカピカの新品。取っ手や車輪など、細かい傷があったはずなのに綺麗に磨かれている。 全部品を取り替えたのではなく、丁寧に掃除して、また使えるようにしてくれたのだろうか。自分のカバンだ、と面影が残っている。 なんて完璧な仕事をしてくれたんだ…! 「これは、追加料金が必要なんじゃないか?」 「いやいや、ちゃんと預かるときに前払いしてくれたじゃないスか。清掃はサービスっス。」 「ありがとう、本当にありがとう。」 思わず数人は英護の手を取り、固く握手した。自分でも意識していなかったが、やはりこのカバンが大事だったんだ。これからは、手荒に扱わず大切にしよう。 満足したところで手を離そうとしたら、英護が手を離してくれない。どうしてだろうと顔を見ると、笑顔が消えていた。不安そうに眉を垂らしている。 「…安堂さん、確認なんスけどこれで終わりじゃないですよね?俺たちの関係…これで貸し借り無しなんて、嫌ですからね?」 小声でそんなことを言っていた。 数人は再び呆けた顔をして、それからもう一度手を重ね合わせた。 「もちろん店にも来るし、それを危惧せずとも君と私は…こ、恋人…だろう?これからもよろしく頼む…。」 「コイビト…!っス!そうですよね!」 パアッと笑顔に戻った英護は嬉しそうに手を握ったまま上下にブンブンと振った。 それからその手を手前に引いて、バランスを崩した数人の耳元でねっとり囁く。 「俺もう、タチそう…。マジで急いで店締めして、安堂さんのえっちな声聞きたい…」 「はわ、はわわ…」 「ボンクラぁ!いつまでボーッとしてんだあ!」 ムーディーな雰囲気を、店裏のボスの声が吹っ飛ばした。慌てて二人は体を離す。 「は、はい!今やるっス!」 「今日はもう店締めるから、5分で帰れボンクラぁ!」 「え、えぇ…」 英護は本気で困惑した声を漏らしたが、こういう気まぐれもよくあるようだ。こちらを見てウインクした。 「外で待っててください、一緒に行きましょ♪」 「う、うむ…」 1人店内に残された数人は、囁かれた耳を擦る。彼がいい声なのは今日に始まったことじゃないが、今のは本当に腰が…抜けそうだった。余韻にポーッとしていたが、店の電気がパチパチ消えていく。冗談じゃなくしまるらしい、邪魔しないよう急いで店の外に出た。 その後はもちろん、早く終わった分、長く車で快感に翻弄された。英護のせっくすはしつこくてネチこくて、体中にきすをされて…でも、めちゃくちゃ気持ちよかった…♡
/411ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加