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いつもの待ち合わせの駐車場、いつものように助手席に英護が乗り込む。
「ねね、安堂さん、旅館のことなんですけど…」
「……。」
「あれ?安堂さん?」
上機嫌に話しかけてきた英護も、さすがに数人の不機嫌そうな眉を見れば押しとどまる。
数人は返事をする代わりに、フイと顔を背けて首筋のキスマークでアピールした。
すると英護はしまった、とばつの悪そうな表情を浮かべた。ばっちり心当たりがあるらしい。
「あー…っ、すみません、もしかして…学校で誰かに見られちゃいました?」
「………。」
無言でエンジンをかける数人、向かうのはいつもの橋の下。シートベルトをした英護が、体を小さくして反省してる。
「すみません、ちゃんと言ってなくて…てか、見えるとこはダメって話でしたよね。昨日えっちなことをして、ぐったりした安堂さん見てたらムラムラしちゃって…でもそんなの言い訳で、約束守らなくてごめんなさい…。」
「………。」
一応、年は数人の方がずっと年上だ。年下の恋人がこれだけ反省の言葉を述べて、冷たく無視するほど心は機械化してないようだ。
だから下りろと言ったり黙れと拒絶することなく、橋の下の定位置で停車した。
「いいか、今後このようなことがないように。」
「はい!仕事にご迷惑かけて、すみません。気をつけます。」
英護が百点の反省をするから、説教する気も薄れてきた。だが愛嬌だけでナアナアにしてはいけない、というのは教師の性だろう。
「いくら君と私がせっくすする関係でも、それはプライベートであって、お互いの業務に支障を…」
「ん?んん?」
「…来してはならない。それは社会人としての常識である。立場の話を持ち出すのは不適切かもしれないが、私は教師だ。見られたのが同じ教員だから良かったが、多感な時期の生徒に悪影響を与えては…」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください、すみませんあの、俺といつセックスしました??」
話に割り込んできたと思ったら、何を言ってるんだ?
「毎日のようにしてるじゃないか、せっくす。」
「えっ毎日?いや、安堂さんセックスって知ってます?セックスですよ?」
…いい声で連呼されると、威厳が緩み頬が赤くなる。もちろん、私は大人だ。知っているとも。
「男性器を女性器に挿入し、刺激して射精する一連の流れを通常SEXと総称する。だが君と私は男同士だ、入れる場所もないだろう?」
だからお互いの性感帯を刺激することをせっくすと認識していたが…英護の反応を見るに、一部誤りがあるらしい。深く深くため息をついて、頭を抱えていた。
「大事にしすぎると、こういうところも弊害あるんスね。」
低い声でそう言うと、シートベルトを外すや否や、私の方に覆い被さり運転席のシートを押し倒した。
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