えぴ16

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「それと、これ見てくださいっ」 淫らな雰囲気をかき消すような英護の元気な声に数人もハッと我に返る。 パーソナルスペースを無視してピッタリ寄り添う英護はスマホの画面を見せた。 「このホテル予約取ろうと思うんス、めっちゃおしゃれじゃないスか!?」 「お、おお…!」 確かに写真を見る限り外観も内装もキレイなだけじゃなく、チープに見せない豪華な装飾が施されている。とは言え悪趣味なゴテゴテではなく宿泊客の目を楽しませるのに十分なくらいで、和洋折衷が美しいホテルのようだ。 「いいところじゃないか。」 「ッシャ!じゃあ二人分予約しますね?」 「フタリブン?」 「だからここ、安堂さんの修学旅行先のホテルなんス。ここでセックスしようって話っスよ。」 「せせせせ、せっくす…!」 こんなに素敵なホテルで性行為なんてしていいものだろうか!?数人は眉をひそめ、忙しくメガネをかけ直す。 「いや~さすが観光地、ホテルの数も多かったっスけど、全部見て1番ここが気に入りました!安堂さんも賛成で本当に良かったっス!」 「全部見たのか…すごいな。」 このイケボチャラ男は時折、その風貌から予想つかない真面目さを発揮させる。彼が旅行好きと言うのもあるだろうが。 「それじゃ手続きとか任せてください!」 英護は素敵な笑顔で話を締めようとしたが、1番大切な話がまだじゃないか。 「ちょっと待て。」 「なんスか?」 「宿泊費を教えてくれないと、いくら用意すればいいか分からないぞ。」 「いいんスよ、そんなの!安堂さんは仕事で行ってて、俺のワガママで付き合ってもらうんスから、俺に費用持たせてください!」 「……。」 「ああっ安堂さんのえっち!」 身を乗り出して英護のスマホを覗き込んだだけだ、それっぽい声出すな。抵抗される前にスマホの画面をスワイプすると…思った通り、1泊1人1万円する。しかも食事なしのプランだ、英護が限界まで切り詰めてるのは火を見るより明らかだ。 「夕食ビュッフェのプランがあるじゃないか。」 「そっちは15000円するんス、焼き肉食べ放題スから…でも要らないでしょ、安堂さんは学校が予約したホテルで食べるだろうし、俺はまあ…適当に食べますから!」 「……。」 こいつ、食べるプラン想定してないぞ。 そこまで金欠ならホテルに誘わないだろうから、単純に自分のことを考えていなかったんだろう、私を喜ばせるためだけで… 「ビュッフェ付きにしなさい。それで四泊五日、1人六万だな。」 「計算早ぁ!ってか高ぁあ!」 当然英護には移動費なども含まれる、そこまでの出費は予想外だろう。意外なことにオロオロして困ってる。
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