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「私が十万出す。」
「ダメっス!俺本気で安堂さんから1円も受け取らないつもりスからね!?」
「君と私の旅行だろう、それに年上の私が少し多く出すのは当然だ。」
「年上なんて関係ないス!俺は!そんなつもりでいい宿見つけたんじゃないっス!」
「……。」
言い争いになりそうなところで先に冷静になったのは、やはり大人の数人だった。
英護は金銭面で苦労しているからこそ、金絡みに神経質なのだろう。それから本当に自分の出費を視野に入れず、自分が出せるギリギリを考えて考えて、悩んでくれたのだろう…そこまでやってくれて、いたなんて…
「…君の気持ちは本心でありがたい。」
「う、うう…なんスか、その余裕…っ」
まだ喧嘩したそうな英護の目を見つめ、真摯な態度で手を重ねた。
「教師の私からすれば修学旅行は学校行事だ。プライベートはない。毎年同じ場所同じホテルに泊まるから新鮮味もない。でも君が誘ってくれて初めて『楽しい』と思えたんだ。そのお返しを、金で解決出来るものと思ってもいないが恋人としてサポートさせて欲しい。ダメだろうか?」
「あう…ダメじゃ、ないスけど…」
怒りに集中していた英護が淡々と数人に詰められ、半ば混乱している。そのまま押し切ることも出来たが、数人はそうしなかった。
「私が『楽しい』と思うためには君も『楽しい』と感じて欲しい。私たちは、ただ
せっくすするために泊まるのだろうか?」
「それはっもちろん違います…俺も安堂さんと楽しく泊まりたいっス!そのためならセックスも我慢します!」
それは私も困る。せっくすしてみたいから。
「食事の宛てもないくらいだ、このまま君だけに無理させたら安心できない、楽しくない。私が満足するために、少しばかり出費させてくれないか。」
「せめて…せめて半分!5!」
それさえ受けとりたくないって顔して英護は指を5本立てて見せた。
「10」
「5!」
「10」
「…6!」
「10」
「もう無理7!」
「10」
「いや刻んで下さいよおぉ!」
びた一文負けない数人に、先に英護が折れた。
「こういうのって9とか8とか、せめぎあいするもんスよ!?全く引かないじゃないスか不動明王スか!?」
なんだそのツッコミは、と言いたかったがやめといた。
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