えぴ17

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時は経ち、諸々済ませた数人が丁度風呂から出たタイミングだった。 「安堂さーん」 「おぉ?」 扉の方から聞き慣れた声がする。 英護が扉向こうの廊下から呼んでるのだろう…インターホンは壊れてなかったと思うが、待たせるのも悪い。完全に水分を拭き取れないまま着替え、玄関に向かいながら頭をバスタオルでガシガシ拭いた。 ガチャ 「待たせてすまない。」 「んーん、まだ1回呼んだとこっスー」 やはり扉の向こうにはニコニコ笑顔を浮かべた英護がチョコンと立っていた。すぐに中に招き入れ、防犯のため施錠する。 「あ、安堂さんやらしー。俺を閉じ込めて、どんなエロいことするつもりスか?」 「な、あっいやそんなつもりじゃ、すぐ開ける!」 「や、冗談っスよ。」 思わず英護も苦笑するが、意識しまくってる数人は混乱して鍵を開けてまた締めた。 参ったな、もっと毅然とした大人の余裕を持って迎えたかったのに動揺しまくりだ。 小説のヒロインのように「よく来たわねウッフン」くらい言ってあげようと練習していたのに、それを言う機会も逃してしまった。 自宅なのに挙動不審な数人と違って、英護は物珍しく廊下をシゲシゲと眺めていた。 「めちゃめちゃキレイ…完璧な掃除っスね!」 「む、いやまあ、日課だ…。」 内心褒められてとても嬉しい。英護は1人先に進んで、リビングに向かう。 「わっ、リビングにも本棚に本がたくさん!…本当に本好きなんスねえ。」 ちょっとした図書館のような内装に英護は顔を輝かせるが、数人には見慣れた風景だ。 真っ直ぐキッチンへ向かい、お湯を沸かす。 その間英護は家捜しすることなく、辺りをキョロキョロ見渡す。 「飲み物はコーヒーでいいか?」 「えっとその…俺コーヒー飲めないんス…」 「む、そうか。紅茶とココアもあるぞ。」 「ココアで!」 嬉しそうに食いつく様子は年相応で可愛いんだけどな、ベッドに入ると凶悪なんだ。 戸棚からココアの袋を取り出した。 「なんか…大人のオトコの部屋って感じがして、カッコいいっス!」 「世辞はいいから、席につきなさい。」 「いやいや本心っスよ!勝手な理想だけど安堂さんはキチンとしてるんだろうなーって思ってましたけど、想像以上っス!」 「む、む…ありがとう。」 掃除を頑張って良かった、でもべた褒めされると照れる。手間取ってるフリして戸棚の死角でメガネクイ。
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