えぴ20

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なんと間の悪い、配達が今来たのかと反射的に体を動かそうとしたが、動けない。 英護がイタズラで阻んでいるのかと思ったがそうじゃないらしい。むしろ彼は目を見開き、震えていた。 「英護…?」 「ひっ…!」 ドンドンドン、ドンドンドンとノックの音に代わると両耳を手で塞ぎ、その場にしゃがみこんでしまった。何事か聞いてやりたいが、恐らく原因は配達員のチャイムだ。早くこれを終わらせないと、ずっと苦しむことになるんじゃないか?と機転をきかせ、スルリと横を通った数人は玄関に急ぐ。 ピンポーーンピンポー ガチャッ 「はい、はいお待たせしました。」 「あーすお届けものでーす、安堂数人さんでお間違いないすかー。印鑑お願いしゃーす。」 「はい」 ポン、と判子を押して頼んでいた商品を受け取る。配達員は軽く頭を下げ、早々に立ち去った。ああ驚いた…っとそう言えば、英護もだ。まだ秘密なので荷物を下駄箱に隠す。 「………。」 驚かさないようソロリと背後から近づいたが、変わらず英護は廊下の真ん中にしゃがみ、震えていた。どうしてあげればいいだろう…。悩んだ末、一緒に隣でしゃがみ、ソッと肩に手を回して抱きしめた。 すると、案外簡単に英護の震えは止まった。 「アンド…さん…」 掠れた声で顔を上げた英護は、見たことない虚ろな表情で、滝汗を顎に伝わせていた。 「言わなくてもいい、落ち着くまで隣にいても大丈夫だろうか。」 「ん…居てください。」 もたれかかってきた英護の体でバランスを崩し、胸元で頭を抱き止める形で落ち着いた。 もう英護は震えていないが、次はしばらくの間ピクリとも動かなかった。どうすることも出来ず、数人はその間フサフサの茶髪を撫で続けた。
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