えぴ25

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修学旅行先は京都だ。 学校から出ると言うことはそれだけ世間様に見られるということ。規律に厳しい数人は普段以上にスーツのシワを丁寧に伸ばし、背筋をピンと張っていた。こんな時数人は着ているスーツの高さで競うのではなく手入れの良さをアピールする。 学生たちよりも何時間も早く出勤し、手配したバスの運転手と更に打ち合わせし、諸々あれこれ必要な手続きを確認する。それからようやく生徒たちが通学してきて、期待と興奮いっぱいのようすで集まってきた。 バス前で銅像のように立って生徒を見守る数人。彼らにとって人生の思い出となるこの日に誰一人欠けることなく天気の良いことを、ワクワクで眠れなかった彼らに代わって感謝する。だがそれは同時に、帰りも全く同じように怪我もトラブルもなく安全に彼らを親御さんの元へお返しする義務も発生するのだ。 本当は今すぐ熱の抜けない体のスーツを脱ぎさり、胸を淫らに弄り尻も自分の指でいいから満足いくように埋めたい。いやらしい声を上げ、快楽に興じてたまらない数人が取った行動は… パンパン!といい音を鳴らして手を叩く。 すぐに生徒たちは振り返り、畏怖の表情で数人を見た。 「静粛に!今回の学習行事に限り、君たちは大人の保護下を離れる。1人1人が意識して社会のルールに則り、輪を乱すことはあってはならない!守れない者は今この場で置いていくつもりだ!異論のある者は挙手したまえ!」 これだけの大人数を静まり返らせることが出来るのは数人くらいだ。もちろん誰も挙手しない。生徒一同「アンドロイドは怖い」、それだけだ。だが、浮き足立つ彼らを制御するのはこれしかない。楽しいからと何でも許せば働く社会人の迷惑になったり彼ら自身、何か大怪我をするかもしれない。それだけはあってはならないという強い意志が煩悩を凌駕した。 「では出発の時刻である。各自、静かに速やかにバスに乗るように!」 腕時計を見ながら数人は全生徒に指示を出す。それを同行する矢車先生がうっとり眺めていた。教頭も同じバスで同行する。 さて、修学旅行の始まりだ。 傍に佇むスーツケースは、私の誇りだ。
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