えぴ25

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「では今年もよろしくお願いいたします。」 「はいよろしくお願いします。」 毎年依頼しているバス会社の初老の男性運転手と挨拶を交わす。基本このバスを乗り継いで、午後の寺院巡りをする。 朝の叱咤激励のおかげか誰一人怪我することなく修学旅行先の京都に到着したが、数人は微塵も気を抜かない。 「全員注目!本日君たちの移動に協力してくれる運転手の山田さんだ。全員、一礼!」 さすがに旅行先に到着して浮かれた彼らを制御するのは難しい。思い思いのタイミングで全員がよろしくお願いします、と頭を下げた。これは大丈夫だろうか…? 有名な寺院を三ヶ所回り、清水の舞台で自由行動となる。見回りもあるが二時間猶予があり、その間ちゃんと英護と合流出来るか確認のため、会う予定がある。連絡は密に行っているので彼も直、京都に来ることは分かっている。だがあまりに生徒の輪が乱れていたら夜の本番に備える必要があるな…。 「いいか、来てしまえば何をしても帰されないと言うことにはならない。毎年、ふざけた輩を強制送還する手配までしている。これは遊びではない、授業だ!ルールを守れない者は今すぐ帰る手続きをしてやる!」 再びの喝で生徒も落ち着きを取り戻す。 怒鳴っていればいい、という訳でもないからこの塩梅が難しい。また全員が速やかにそれぞれのバスに乗り移る。 「………。」 実は1番浮かれているのは他でもない数人かもしれない。もうすぐ英護と合流することを考えると鉄面皮を保つことも難しい。口角が不自然にピクピク動くが、生徒はそれを怖い先生だけど、なんだかんだ自分達を思ってくれてるんだな、と都合良く解釈してくれたようだ。 1ヶ所、2ヶ所と何度見ても荘厳で立派な寺院を巡り彼らの学習を推し進めていく。 当然、帰ったらレポートの提出があるぞ。 ここまでは順調、全てが予定調和。 問題は3ヶ所目の自由時間で…。 思いがけないイベントが発生する。
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