別れ

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「椿さん?」 声を掛けたのは椿さん。 でもなんか慌ただしい? と言うか急いでる? 「どうしたんですか?」 とりあえず聞いてみた。 「空港!」 え? 「今すぐ空港行って!」 そう言いながらあっち方向を指差す。 「どうしたんですか?そんな急いで。」 「京君が!」 京介? 「京介が出発便を早めたの!京介!お昼の便で日本発つって!」 ………え? 「早く!今ならまだ間に合うから!」 肩を捕まれる。 そう言われても…。 眉を寄せる私。 これから決勝がある。 行って戻ってきて間に合う保証はない。 私は、陸上に戻るって決めたんだ。 だから今ここにいるのに… 「小雪!」 !!! 真琴さんが叫ぶ。 「へ?」 「行け!今行かないとお前、後悔するぞ。」 …でも。 「大丈夫だ、間に合わなかったら何とかしてやる。俺を誰だと思ってんだ?」 ……真琴さん。 「小雪ちゃん早く!」 椿さんが急かす。 「小雪。」 ふとかごめが手を握った。 「自分に正直に生きる。そう決めたんでしょ?行きなさい。間に合わないことは考えない!」 …………目を閉じて息をはく。 そして目を開いて思う。 ちゃんと伝えたいこと伝えなきゃ駄目だと。 「行ってきます。」 「小雪ちゃんこっち!」 そう言った直後椿さんに腕を引っ張られて走り出す。 そのまま押し込まれるは黒塗り車。 「急いで!」 扉を閉めて椿さんは言った。 私よりも必死? 車は警察に捕まらない程度に速度を上げて走り出した。 京介にも。 決勝にも。 間に合えばいいなと思いながらただただ祈ってるだけしかできないでいる私がいた。 「朝にね、京介から電話があったの。」 そんな私を見かねたのか椿さんは話す。 「京君、小雪ちゃんに会うのが怖いって言ってた。」 え…? 私に会うのが…怖い? なんで? 「折角心決めたのに、小雪ちゃんに会ったら全部壊れちゃうのが怖いんだって。」
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