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猛スピードで向かってくるそれは、俺たちの前で暴風を巻き起こしながら急停止する。
「何してんだよ、ワット。早く乗れ」
ポカンとしていると、すかさず催促される。
「ローイ、お前いつの間にドラゴンなんて飼い慣らせるようになったんだ……?」
信じられないことが次々と起こるこの状況についていけないが、急かされるがまま素直にドラゴンの背中に乗り込む。
男二人が乗ってもなんて事ないような重量感、鱗はゴツゴツしていて硬く、かなり上級レベルの類いだと察する。
ローイの得意とするのは、空気の流れをコントロールする力だったはずだ。得意といっても、もちろん噴火なんて巨大なエネルギーを制御できるわけはない。だから死んじまったのだが。
「こんなすげえ能力持ってたのかよ」
ドラゴンの背中で空気の薄い風を浴び、小さくなった村を見下ろすと、改めてその凄さを実感する。
「うーん、よくわかんないけど、死んだ後なぜかできるようになったんだよなぁ」
「なんだそれ」
「怪我の功名ってやつ?」
「いや、怪我どころか死んでるんだから元も子もねーだろ」
「そりゃそーだ」と笑うローイに、俺は身体をあずけた。
昔と変わらない距離感にほっとする。このまま二人で、どこまでも広がる世界を見に行くんだという気持ちが蘇る。
どうやら村の言い伝えは本当だったらしい。
一年にたった一夜だとしても、こんなあっさりローイに会えるなら、もっと早くあの村に行けばよかった。
ローイを亡くしてから何年もの間、俺は一体何をしていたんだ。
「俺ができたんだから、ワットもそのうち生き物を操れるようになるさ」
「へぇ、ドラゴンも?」
「いや、ドラゴンはまだ早い」
即答から察するに、相当な難易度だったのだろう。
「うーん、何だったらいけそう?」
「まずはユニコーンだな」
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