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「……じゃあ、来年は俺がユニコーンに乗ってお迎えに上がりましょうか、プリンセス?」
なんの根拠もなしに適当なことを抜かすローイには、決まって俺が冗談を重ねる。何年も会っていなかったとは思えないくらい、俺たちはすぐにあの頃の日常を取り戻した。
ゲラゲラと笑い合っているうちに、見覚えのある島に着いた。
「ここって――」
以前に一度来たことがある、多種多様な猛獣たちが身を潜める危険なジャングルだ。
ジャングルの奥地には幻の果実があるとかで、若気の至りに任せてそれを探しに行ったのだ。
「前に来た時、ワットだけ幻の果実を食べ損ねて一週間口を聞いてくれなかったことがあっただろ?」
「ああ、思い出した。お前が大蛇にビビって俺の分を落としたせいでな」
今となっては笑い話だが、あの時は怒りでどうにかなりそうだったのだ。
「だから、また必ずここに来て食べさせてやるって、約束しただろ」
「そうか、……ありがとな」
旅の再開の地をここに選ぶとは、よっぽど罪悪感に苛まれていたのだろう。
暗く、深いジャングルを見据える。
かつては猛獣と死闘を繰り広げることもあった場所だが、生き物を操る能力を備えたローイがいれば怖いものはない。
今宵はいとも簡単にその果実の元へ辿り着いてしまった。
「……どう?」
「うん、なんか、……普通の果実だな」
酸味も甘味も大して特徴はなく、まさに普通としか言いようがなかった。
見た目は確かにキラキラしており幻と形容するのに相応しいが、命懸けで追い求めるような味では決してない。
「だからあの時そう言ったろ?」
腹が立ったので、口に含んでいた果実の種をプッとローイの顔面に飛ばしてやった。
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