一夜の旅を、いつまでも君と

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 次に俺たちが舞い降りたのは、氷の世界だった。建物も、道路も、乗り物も、あらゆるものが氷でできた不思議な都市国家のようだ。  しかし、人の影がない。どうやら滅んでしまったらしい。中心部にある廃城は、爆撃を受けた跡がある。内戦だろうか。城壁はズタズタで、その周りにはたくさんの氷でできた大砲や剣が転がっている。  氷以外はなにも見当たらない。つまり、何千、何万年もの時を経て空気中に分解されてしまったのだ。しかし氷だけは溶けることなく、その形を保っていた。  争いの原因は、この溶けない氷にあるのだろうか。探究心に火がつき、自然と身体が前のめりになる。 「よし、行ってみよう!」  ローイは大地から空に向かって、空気の流れを作っていく。俺が今まででいちばん見てきたこいつの能力だ。  作り出した上昇気流に身を任せ、ふわふわと空を漂いながら、街中や廃城をくまなく探検していく。  何に使うのかよくわからない大きな箱や、小さな精密機械のようなものまで、色んなものを目にした。 「きっとすげー文明だったんだなぁ」  ローイがぼそっとつぶやく。   「諸行無常って言うけどさ、この氷を見てると、永遠ってあるのかと思っちゃうよな」 「……ああ」  永遠なんてものはあるのだろうか。  昔、旅の中で哲学者たちが永遠の有る無しについて激しい論争を起こしていたのを見たことがある。結局どっちが勝ったんだっけか。 「……俺は、永遠を信じたい」  ローイが珍しく感傷的なことを言う。  俺も静かに頷いた。  キラキラと永遠に輝く氷の世界。  他にも、まだまだ俺たちの知らない世界がたくさんあるはずだ。それなのに、先に死にやがって。  年に一夜の俺たちの旅は、本当にこの先も永遠に続くのだろうか。  信じるしかない。信じたい。  ワットとローイは氷に旗を立てて、次なる世界に向かった。  その後も、時間の許す限り、世界中のあちこちを見て回った。
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