一夜の旅を、いつまでも君と

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 有利な武器や情報を手に入れるため、奴からの不意打ちに警戒しながら数々のミッションをこなしていくのだが、いつの間にかむしろこっちの方が面白くなってしまい、気付けばゲームの中のミッションをクリアすることが目的になってしまっていた。  それはローイも同じだったようで、どちらからともなく手を取り合い、力を合わせて徐々に難易度の高いミッションに挑んでいく。 「ワット、手伝ってくれ! この岩重すぎて運べない」 「わかった。今行く!」  ローイが風を巻き起こし、そこに俺の力を乗せれば、巨大な岩は簡単に持ち上がった。  すると岩があった場所から、温泉が勢いよく吹き出す。やはりこの岩のせいで温泉が枯渇していたのだ。宿屋の亭主から、お礼にルビーをもらった。 「これ、早速換金してきていいか?」 「そうだな。その金で通行手形買って、ダンジョンに行こう」  たった二人のパーティだが、他の参加者を次々と押しのけ、中ボスをスルーし、さっさとラスボスを倒してしまった。  現実世界に戻ってきた頃には、もはや喧嘩をしていたことなどすっかり忘れて、勝ち負けすらどうでもよくなっていた。 「ラスボスっつってもあんなもんか。ワットの能力ってやっぱすげーな」 「いや、ローイには適わねぇよ」  楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、もうすぐ夜が明ける。ドラゴンに乗って、俺たちは再会した村に帰ってきた。 「あー、楽しかった! ワットと見る世界は、やっぱサイコーだ!」  ローイは満足気に顔を綻ばせたが、俺は正直なところまだ物足りない。しかし、タイムリミットが迫っている。生き返ることができるのは、一夜だけという決まりだ。  そして石碑の前に手をついたローイの姿はだんだんと薄くなっていき、やはり言い伝えは本当だったのだと痛感する。 「ああ、また来年だな」  別れを惜しむべきなのだろうか。
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