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俺たちはそこで死んでしまったが、英雄として祀られることになった。それが代々受け継がれ、今でも毎年祈り続けられている。そのおかげで、一夜限りではあるが、こうして再び旅に出ることができた。
俺は長い間、死んだことに気付かずにひたすらこの世を彷徨っていたようだ。
「なんだ、そうだったのか……」
ポロポロと涙が溢れ、頬を伝う。
そっか、やっと眠りにつけるんだ。
ローイの隣に寝転ぶと、心の傷がじわじわと癒えていくのを感じる。
死んでから眠る場所を延々と探し求めていたワットの魂は、初めてこの安らぎという感覚を知った。
「じゃ、おやすみ」
「ああ、今夜はぐっすり眠れそうだよ」
「それは何より。また明日な」
「……げ、明日も顔合わせんのかよ」
泣き顔を晒しながら言えたセリフじゃない。それでも俺は目を腫らしながら必死で虚勢を張る。
「当たり前だろ? 同じ墓に入るってそういうことだ」
俺たちが眠る場所。
そこは、村人たちの献身的な供養のおかげか、VIPルームとも言えるような快適な場所だった。
「お前の寝相が悪くても問題ないな、この寝心地なら」
「だろ? んで、年に一回は旅の続きができるんだぜ? とんでもねぇ優良物件だよな、ここ」
「全ては日頃の行いだよなぁ」
「間違いない」
来年はどこに行こうか。
ああ、その前に、ユニコーンを探さないと。
「……ったく、帰って来るのおせーよ」
静寂の中、石碑の文字がキラリと光る。
「はは、ただいま」
そんな二人を、青くなった月は笑った。
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