5.神様会議

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5.神様会議

声の主の目的は分かり切っていたが、このままではオチがつけられないとばかりに、4人の神々は、111号室の前で踊り出した。  イザナギとイザナミは、社交ダンスを。スサノオは、ブレイクダンス。ツクヨミは、盆踊りを披露し始めた。  すると、部屋の引戸がスッと開き、中から光を纏ったアマテラスが姿を現した。  「やはりわたくしの登場はこうでないと」  アマテラスの姿を見るやいなや、4人の神々は同時に同じことを思った。 (天岩戸の神隠れやりたかっただけじゃん)  薄暗いネットカフェの111号室前だけが、スポットライトを当てたかのように、眩しく輝いている。その光の中に今、5人の神が顔を揃えた。 「さて、皆さん。わたくしの与えた課題の答えは出ましたか?」  最初に口をひらいたのは、ツクヨミだった。  「彼らは古い慣習に囚われたまま、身動きできない状態です。解放してあげた方が、よほどこの国のためになるのではないでしょうか」  スサノオが続く。  「ほんま、子供からして絶望しとる。どいつもこいつも自分のことばっかしや。自分が加害者になっとる可能性に気付いとらへん。アカンやろな」  イザナミは溜息をついて、同感というように、ゆっくりと手を挙げる。  「人を以って国とするのか、国土を以って国とするのか、そこんとこを誰も考えてない。 私とイザナミが、この国を産んだわけで、その上で醜い小競り合いを山ほど繰り返す。正直見るに堪えないね」  イザナギがそう言い終えると、アマテラスはゆっくりと目を開き、一枚の白紙を掲げた。 「日本初期X。このXに入る文字というのが、今回のあなた方への出題でした。どうやら答えは一文字で済みそうですね」  4人の神が黙って頷く。すると、どこから取り出したのか、アマテラスの右手には筆が握られている。  床に白紙を置くと、ゆっくりと筆を動かした。  ”化”  一文字を書き上げて、筆が紙から離れた瞬間、すべての日本人が姿を消した。  「歴史は不可逆だけど、私たち神だけに与えられた、『初期化』を行使させてもらったわ。さぁ、皆さん。日本創りを始めましょう」
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