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2.神様電話
「はい。こちら子供電話相談室、臨時担当のスサノオです」
無駄にバリトンを効かせた声。無造作に伸びた髪と髭。着物こそ、漂白剤に漬けたかのような真っ白さであったが、それがなければ、ホームレスに間違われても仕方がない、むさくるしい男が電話口に出た。
「あのぉ…あのぉ…」
電話をかけてきた、おそらく小学生と思われる男の子の声は、すでに半泣きであった。それがスサノオの醸し出す威圧感によるものなのか、単にその小学生がヘタレなのかは判然としない。
「あのぉでは、分からん。要件を言え、要件を」
「ちょ、ちょっと、スサノオさん! 神様か何か知りませんけど、相手は小学生なんです。
もっとやさしく…」
別の相談員が、それとなく苦言を呈すと、アホかという文字を顔に浮かべるようにして、スサノオが反論する。
「そんなんやから、ちょっとした事で苦しいだの、死ぬだの喚き散らすだけの連中が増えたんやないんかい。あー、電話の君、で、何の相談や」
「SNSの誹謗中傷が酷くて、もう僕死のうかと…」
「出た。すーぐ死ぬとかぬかしよる。あんなぁ、人間誰でも必ず死ぬように出来てんねん。それを何でわざわざ自分で死ぬことあんねんな。どうしても死ぬ言うんやったら、そこまでお前さんのこと追い込んだ連中、皆殺しにしてからにせんかい! ワシが許す!」
わーっと、慌てて別の相談員が受話器を取り上げた時には、すでに電話は切れていた。
別の電話を取ろうとするスサノオに、周りの相談員が飛びかかって止めようとしたが、ヤマタノオロチを成敗した神の前には、あまりに無力であった。
「はいな、神様電話相談室。あ?なんやワレ! 何がパンツの色は?じゃ! って、パンツって何なん?」
変態相手に変態を呷る回答をしながら、スサノオは頭の片隅で思考を巡らせていた。
(Xなぁ…どないしよ)
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