奥さんにはナイショ!

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 彼の技巧に脱帽した俺は、嫉妬に駈られた。自分だって そこそこ経験はあったけど、こんなに上手くはなかった。いや、相当ヘタクソだったということが分かって自信を失いかけているところ。俺の場合、次のステップくらいにしか捉えてなかったのに、彼の場合、既にセックス。もう、前戯なんてもんじゃなかった!   唇が離れると、今度は蕩けるような視線にやられた。ヤバイ、男から迫られるのって女以上にそそられる――― と、背中の産毛を立ち上がらせていたら、反応しかけた股間に手を置かれた。 「よかった、男でもで平気で』 「はい?」 「もしかして、バイセクシャル?」 「い、いや……」 「だって、キスしてきたから」  あれは酔った勢い。しかも、ほっぺだったし…… 「さっき『我慢してきたことをする』って宣言したでしょ? アレ【このこと】だったんです。自分、男でもいけるんです。むしろ、そっちの方がいいっていうか」 「う、うそ……」 「だから、前田さんが大丈夫な人で良かった。こんな僕でも手合わせ願えますか?」  手合わせって、それはちょっと…… と言いたくても、捨て猫のように見つめる清原さんの色気は半端なく、首を横に振ることができない。それに、最初に仕掛けたのは俺。頬っぺたっだけど、あんなことしなけりゃ彼に火をつけることはなく、こうして迫られることもなくて……    俺が後悔と懺悔で押し黙っているのを【YES】と解釈した清原さんは、股間に乗せた手をゆるりと擦った。 「固くなってる。よかったら出すの、手伝いますよ?」 「そ、それは……」 「このままじゃ辛いでしょ?」 「えっと、気合いで何とか……」 「それなら、やらせてください」そう言うと、彼はスウェットに手を突っ込んで直に握り込んできた。思わず口から「ひやぁ~~っ」と情けない声が漏れるのも構わず上下に扱き始めたので、危機感を募らせた俺は その手を阻止した。 『どうして?』と、まるで般若の様な顔で睨み返してくる清原さん。その顔に『決して邪魔をさせない』という意志の強さを感じて たじろいでいたら 「じゃあ、なんでキスなんかしたんです?」 「たぶん…… 酔った勢い」 「僕のにも応じたくせに」 「それはね……」  「舌を絡ませて、逃げたら追っかけてきて。僕はてっきり受け入れてくれたものだと」  そう言われると、弁解の余地はなかった。彼の口づけの気持ちよさに体が勝手に反応してしまったんだから…… 「僕に恥をかかせないでください」と、泣き落としにかかった清原さんは、俺の肩に額を乗せてきた。もうこうなったら腹を括るしかない。【据え膳食わぬは男の恥】と言うではないか――― そう念ずるように自分に言い聞かせた俺は、彼の両肩に手をかけて上を向かせると唇に食らいついていた。
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