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自信のない口づけも興奮してくると肝が座わり、気がつくと押し倒していた。唇とは言わず、耳朶や首筋、鎖骨にキスする 最中、組敷く男の顔をうかがえば、瞳を閉じ半開きになった唇から熱い吐息を漏らしている。
『俺って男にもこういう顔をさせることが出来るんだ』と、妙な自信がついた俺は、久しぶりのセックスに興奮し、女にするようなことをした。ただ違っていたのは、股がられて受け入れた部分が【あそこ】だったこと。もちろん、知識がなかったわけじゃないけれど、実際にされると衝撃が走った。
――― 締め付けがキツくて…… ヤバいっ
しかも、目の前で腰をくゆらす男の色香は凄まじく、目でも堪能させてもらった俺は躊躇することなく中に放った。
「ごめん、出しちゃった」と、悪びれずに言うと、恍惚とした表情で見下ろした彼が
「僕のも、いかせて……」
甘い声でねだられた俺は下から激しく突き上げ、上下にリズミカルに踊り出した彼は、俺の腹や顔に熱い飛沫を放ったのだった。
その後―――
体位をかえて二回戦を終えた俺らは、脱ぎ散らかした衣服を褥に抱き合っていた。
興奮が冷めると同時に酔いも冷めた俺は、つけっぱなしのテレビ画面に映し出されたラグビーの試合を眺めながら達成感と充実感、そして後悔の三つ巴を味わっていた。
――― 酔った勢いとはいえ、男となんて……
しかも、相手は隣の御主人、妻のいない自宅で――― だなんて、これって最低だ…… と眉をしかめていたら、腕の中で囁く声が聞こえた。
「後悔、してるんでしょう?」
「ん~、まあね」
「前田さんに迫ったこと、謝りませんよ」
「ま、仕掛けたのは俺だし」
「本当はあなたのこと…… 前から『いいな』と思ってたんです」
「そ、そうだったの?」
「滅多に会わないし、話もしなかったけれど『タイプだな』って。だから、お子さんが生まれると知った時は嫉妬しました」
「そんなこと、御釈迦様でも気がつかないだろうなぁ」
「【ペコちゃん】といい【お釈迦様】といい、前田さんは時々わからないこといいますね」
「ジェネレーションギャップを感じるほど歳は離れてないんだけど……」と、苦笑いする俺の胸を指でなぞり始めた彼がポツリと呟く。
「まだ僕の【願い事】って聞いてもらってないんですよね」
「今のセックスがそうなんじゃないの?」
「あれは前田さんのキスに答えたまでです」
「え~っ、そんなのずるい」と、彼の都合の良さに頬を膨らませた俺だったが
「ま、いっか。で、俺は何をしたらいいのかな」
「えっと……【恋人気分でデートする】。これ、この賭けの条件をクリアしてます?」
そう言って上目遣いに見つめられた俺は考えた。
――― 確か【命を張らない】【金をかけない】【相手を恨まない】【頑張れば何とかできる】っていうのが条件だったはず
「了解。君の願いごと、聞くよ」
彼との逢瀬を再び決意した俺は、帰る間際にLINE交換したのだった。
――― end
次回、続編をお届けします。
受け視点、デート編です。
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