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俺ら夫婦がここへ越してきて一年足らず。その二ヶ月後に彼らもやって来て、挨拶程度だが良好な近所づきあいをしていた。
向こうは新婚で、年齢は二十代後半。共働きで昼間は誰もおらず、専業主婦の俺の妻もあまり関わりがなかったようだが、帰省の際には お菓子をくれたりして印象は良く、ここでは飼ってはいけない猫を見つけた時も文句ひとつ言わなかった。特に、ご主人のイケメンぶりにはメロメロで「あんな旦那と結婚した奥さんの度胸に感心する」が口癖だったくらい。朝早く出勤し、夜遅く帰って来る俺は彼らとの接点が殆どなく、ご主人の顔も両手で数える程しか見たことなかったけれど、確かにアイドル並みの容姿だなと感心していた。
そんな彼が、上はTシャツ、下はトランクス、髪はボーボー、しかも裸足で立ちすくんでいたら別人にしか見えず、しかもスパイダーマンよろしく壁を伝う姿を想像したら可笑しくて、急に親近感を覚えた俺は『彼に服を提供して管理会社が来るまで居てもらって構わないけど』と思い始めていた。
そんな清原さんと一緒に玄関を出た俺は、彼の背後に立って成り行きを見守った。
彼は俺の顔をチラっと見た後、ドアノブに手をやり念じる様に下へ回す。そして、ゆっくり手前に引くと扉が開いたので俺らは一斉に歓声を上げた。
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