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清原さんとの野球観戦は、それは楽しいものだった。彼は野球に詳しく、ヘタな解説者より的を得たことを言うので、俺は膝を打ったり、時には声を出して笑った。「もしかして経験者?」と、尋ねたところ「運動神経がなくて、もっぱら観戦オンリーなんです」と苦笑いする。そんな彼に俺は自慢気に語った。
「実は、お宅のチームの△△選手とリトルリーグ時代にバッテリーを組んだことがあるんです」
「う、うそでしょ!?」
「当時から彼はAクラスの実力があって監督の期待も凄かったです。俺は飽きたのと自分の才能のなさに見切りをつけて、中学に上がると同時にやめちゃったけど」
「今でも彼と交流があるんですか?」
「残念ながら。だけど、彼が帰省した時には学生時代に通っていた食堂に出没するって聞きます。『大スターなのに気さくで昔と変わらない』って店のおやじが話してましたよ」
「なんかいい話 、聞いちゃった」
そんな雑談をしていた時、【当の本人】がタイムリーを放ったので、清原さんは思わず持参したメガホンを打ち鳴らした。その姿が無邪気で子どもの様なので俺は目を細め、これ見よがしに彼を上から下まで舐める様に見つめた。
顔の造形は先程言った通り。あ…… 目の横に小さなホクロ発見。その下にある唇は ぽっちゃり赤くて女の子みたいだし、髭も薄くて中性的な顔立ちをしている。色は白いわ、手首は細いわで、こんな体で女を抱けるのか、どんな風に抱くのか下品な詮索までする始末。そんな俺のいやらしい視線に気づいた清原さんは、酒でほんのり紅色に染まった顔をこちらに向けて笑みを浮かべた。
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