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豊かな黒髪には天然のウェーブがかかり、すらりと伸びた脚の脛とベージュのハイヒールが照明に艶めく。
銀縁の眼鏡の中に見える瞳はヘーゼルで、浅褐色の肌と相まって神秘的な雰囲気を醸し出す。
先ほどの顔合わせの場までは閉じられていた胸元は大きく開き、豊満な谷間がスーツの合わせから零れ落ちそうになっている。
そんな扇情的な容姿を持つ女性――カルラ・サンチェス博士は、にこりともせずソウヤと握手した。
「…『S-Y』です。宜しくお願い致します」
「『ソウヤ』って呼んでやってくれ。これからお前にも色々世話になるかもな、頼むぜ」
「こちらは早く現状の臨時業務から手離れしたいの。これ以上の面倒事には巻き込まないで欲しいわね」
ソウヤは、ミヤジマ博士の軽口をにべもなく突っぱねるサンチェス博士をまじまじと見つめる。
視線に気付いたサンチェス博士は、ちろりと目を向けた。
「――まだ何か?」
「! いえ…なんだか、どこかでお会いしたことがあるような気がしましたので」
「あら、ご挨拶ね。さっき大ホールで会ったばかりなのに」
「あっ…」
「あなたの視覚領域に、私の顔は記録されなかったのかしら?」
そう刺々しく返され、ソウヤは何も弁明出来ずにうつむき、羞恥心に頬を染める。
「…随分と表情豊かなのね」
「俺の最高傑作だからな」
恐縮するソウヤを見て眉を寄せるサンチェス博士へ、ミヤジマ博士はそう誇らしげに胸を張る。
「そう。じゃああなたはその最高傑作の知覚管理機能より、表情管理機能に力を入れたということね」
「優劣つけた覚えはねぇけど、表情はこいつの"内"から来るものそのまんまだぜ」
「…? この子に感情がある、とでも言いたいの?」
「ああ」
その軽い返答にサンチェス博士が目を見張り眉を寄せる中、ミヤジマ博士はソウヤを愛おしそうに眺めながら、感慨深げにひとり頷いた。
「あるよ。…ある。なにしろ、こいつは特別なんだ」
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