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第3話_サンチェス博士
ミヤジマ技研から送り出されてすぐに首相官邸へ向かい、国内要人らへの顔合わせを済ませたソウヤは、王宮へ向かう手筈が整うまで、官邸内に与えられた控室で待機することとなった。
武装した公安警察と警備ロボットらに囲われ、居心地の悪さを感じながら控室まで歩き、入口手前でようやく追随してきた者たちが捌けていく。
「ここで待て」
公安のひとりにそう指示され、彼らの後ろ姿を見送りつつ入室する。
「よぉ、お疲れさん」
すると、誰もいないはずの室内から呼び掛けられ、よく聞き覚えのあるその声に、前へ振り向き目を見張った。
「…博士!」
「座るもんくらい用意しとけってな。礼儀のなってねぇ奴らだよ」
控室で待っていたミヤジマ博士はニッと笑顔を向けた。
「先に向かわれてたのではなかったのですか?」
「質問が面倒臭ぇから顔合わせはブッチしただけだ、王宮までは一緒に行くぜ。…何が悲しくて素人連中の前で、大事な機密情報をひけらかさなきゃならねぇんだっつの」
たて続けに苦々しく悪態を吐くと、博士はころっと表情を変え、ソウヤの肩を抱く。
「独りにして悪かったな。寂しくなかったか?」
「…ちょっとだけ」
「じぃさんたちに色目使われなかったか?」
「いえ、そのようなことは…」
「俺だけのものだった可愛いお前を、汚ねぇ衆目に晒すことになるとはな…自分で決めたこととは言え、胸糞悪ぃぜ。これが娘を嫁に出す親父の気持ちかね」
「俺は女性型じゃありませんっ…、んぅっ」
言葉を返しかけるソウヤの口を塞ぎ、博士は彼の腰を抱き寄せる。
そのままジャケットをたくし上げ、中へ手を入れようとする博士から逃れるように、ソウヤは身をよじった。
「っ博士…、っあっ、いけませんっ…」
「いいじゃねぇかちょっとくらい。これからはお前の身体を、好きな時に好きなだけ楽しめなくなっちまうんだぞ?」
「あぁっ…! っ公共の場では…おやめ下さいっ…!」
「気にすんなって。誰も見てやしねぇよ」
「この後すぐ王宮に入るんですから、服が乱れては…」
「――随分と仲が宜しいのね」
ソウヤが覆い被さろうとする博士を腕で退けようとした時、入口の方から甲高い靴音と人の声が届く。
気付いたソウヤは慌てて博士から離れて身なりを整え、一歩下がる。
「…おお、カルラ。久しいじゃん」
「官邸のどこかにいると思ってたわ。顔合わせに欠席なんて、大それたことをやってのけたわね」
「俺のことをよく知るお前なら想定内だったろ?」
「実際にやる・やらないは別問題よ」
控室へ入ってきた白衣の女性へ博士が笑みをつくり、親しげに言葉を交わすのを見、ソウヤは身を縮めながらも彼の横顔を恨めしげに見上げる。
そんなソウヤへ、女性は一瞥をくれた。
「…安心なさいな、坊や。私とミヤジマとはビジネス以外何の関係も無いわ」
「!」
「男は嫌いなの」
目をぱちくりさせるソウヤへそう緩慢な調子で告げ、一歩進み寄って手を差し出す。
「カルラ・サンチェス。あなたの創造主と同業――アンドロイド開発技術者よ」
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