第1話_拒否権無き指令

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第1話_拒否権無き指令

およそ丸一日前。 ヤマト国王宮のある王都より程なく離れた郊外の一角に、EV自動車が高速で行き交うハイウェイに沿って作られたロボット・アンドロイド開発研究所『ミヤジマ技研』はあった。 等間隔に整然と造られた緑地に覆われ、青空とのコントラストが美しい真っ白なドーム状の建物は、おおそ内部で金属の溶接や化学油脂の調合など、ハード且つリスキーな作業をやっているようには思えない清潔感ある外観で佇んでいた。 ドームの頂上部に造られた天窓は僅かに開き、建物の天守閣とも言えるそこは、研究所のオーナー兼代表・ミヤジマ博士のプライベートルームになっていた。 天窓へと少しずつズームアップしていくと、隙間から漏れ出る甲高く甘ったるい声が、徐々にはっきりと聞こえてきた。 博士私室のインターホンが鳴り、中から応えが返ってくる前にスライドドアが無音で開かれる。 「――。…博士」 ドアを開けた青年は、部屋に入って目の前に広がっていた光景に眉を寄せ、口元をへの字に曲げた。 青年の視線のすぐ先にある寝所は、キングサイズ2台をひと続きにしただだっ広いベッドで、その真ん中には着衣を乱した男と、その周りを囲むように3人の下着姿の若い女性がいて、互いに絡み合ったまま扉の手前に立つ彼をぽかんと見上げている。 ベッドの上に寝乱れる男は、一時虚を突かれたような面持ちを晒した後、すぐににやりと笑ってみせた。 「よぉ、ソウヤ」 ソウヤと呼ばれた青年は、男の秘書か執事らしく、薄水色のストライプシャツとネイビーブルーのベストに、タイトな黒いズボンを合わせたボーイのような格好をしていた。 顔立ちと背格好からは20歳前後だろうと推察されたが、可愛らしいリボンタイでまとめられた首元は細く、華奢で儚い体格も併せて中性的な雰囲気を纏っていた。 肌理細かく透き通るような白い肌に、少し長めに切り揃えられた艶やかな焦茶の髪がさらさらと流れる。 小さめの鼻に、形の整った唇はほんのり桜色を帯び、涼やかな二重の目元からは、長い睫毛の被さる藍色の瞳が覗く。 そんな、"男性"という括りで囲ってしまうのが躊躇われるほどに美しい容姿のソウヤは、上も下も肌蹴た姿を晒す男を冷たい視線で見下ろす。 「"よぉ"、じゃありません。何度もお呼びしました、起きてるなら返事をして下さい」 「悪い悪い、愛の語らいに夢中でさ。これこのように」 「いやぁ、もう博士ったらぁ…」 「~続けなくていいです、証明されなくてもわかってます!」 男は女性の胸へ手を伸ばして続けようとし、またしても猫撫で声が飛び出かけたところで、ソウヤは声を荒げながら遮った。
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