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プロローグ
21XX年。
大気汚染と環境破壊による世界規模の食糧難・病原菌蔓延の末に、著しい人口減少の一途を辿った地球は、人類生存維持を最重要課題として、人間に代わる労働力――高機能AIを搭載したロボット開発が急速に進められた。
古来より発掘されてきた金属や合金、またそれらを化学物質と配合して作られた素材などでは、持続的かつ不朽な機械的労働力を確保するには耐久性が低く、AI機開発においては、あらゆる外的影響に強靭な次世代金属であるレアメタルが必須となっていた。
現存する大小各国でレアメタルの探索・発掘が急ピッチで進められる中、大陸から離れ大洋にぷかりと浮かぶ列島国家・ヤマト王国では、EEZ内の深海広域にレアメタルの大鉱山が発見された。
ヤマトは海洋国家ならではの高度な海底発掘技術を駆使し、またたく間に安定的な供給ルートを敷くことに成功した。
他国が資源確保に悩む中順調に開発・生産を進め、小国ながら世界で指折りのAIロボット・アンドロイド保有・輸出国となった。
ほぼ永続的な労働力を得、人口を僅かずつ増やし国を着実に豊かにしていったヤマトは、海底鉱脈の発見から数十年で『世界一幸せな国』と呼ばれるまでになった。
ヤマトの若き国王は、精力的に国内公務をこなし、国の繁栄の象徴として国民から絶大な支持を得る一方で、外交にも尽力し、他国列強との友好関係の構築に努めた。
しかし、どれだけ友和路線を進めても、広大な私領を持ち国内随一の資産家でもある王家は、負の感情を持つ輩からの妬みを避けられず、国王とその後継者である王子は、国内外から常に命を狙われる存在にもなっていた。
科学技術力の最盛期を迎えた各国では、皇族や王族、大統領や首相など国内の要人警護のため、屈強堅固なアンドロイドを専属護衛として付けるようになっていた。
もちろんヤマト国も例に漏れず、国王ならびに王子へは、国内の優秀なアンドロイド開発技術者の手による、最新鋭の護衛アンドロイドが配備されていた。
しかしそれでも、命をつけ狙う者たちは針の穴ほどの警備の隙をつき、王族へ脅威の手を振りかざす。
そして先日――大規模なサイバー攻撃により王宮のセキュリティシステムがダウンし、復旧に動いた王子付きアンドロイドが僅かに護衛から離れた間隙に、王宮内部へ侵入した実行部隊が無防備な王子を襲った。
浴びせかけられた銃撃は、王子を庇った国王に被弾する。
一瞬遅れて動いた国王の護衛アンドロイドが実行部隊をせん滅した時には、床に敷かれた新緑色のラグに鮮血が広がり、倒れる父王の傍に崩れる王子の泣き叫ぶ声が木霊していた。
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