番外編 のんはたか兄ぃへ手紙をおくります!

9/9
470人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「たかにぃ、ですか」 「うん! たかにぃ!」 「その方は、どちらに?」 「えっとね。一ヶ月だけ、南に行ってるの。妖怪退治なのよ」 「ほほー。えーと、うーん。えーと、それは大変なお仕事ですね……」 「うん!」 「それで、南というのは?」 「電車の通ってないとこ。南!」 「ほほほー、成程成程……」  飛脚の脳裏に浮かぶのは、先程別れたばかりの、馴染みの老婦人の言葉。 『黄金色の髪の女の子がね、たかにぃ宛てに手紙を送りたがると思うのよ。送付先を、それっぽく聞き取ってあげてちょうだい。手紙自体は、この封筒に同封すれば良いから』 (それっぽくってなんだ!? これをそれっぽく……?)  天を仰ぐ飛脚に、希海は不安そうに服の裾を引く。 「おにーさん、難しい? だめ?」 「いえ! いえいえいえ、とんでもない! このおにーさんが、たかにぃ様を見つけ出し、お手紙を届けてしんぜますとも!」 「!!」  嬉しそうにふくふくのほっぺを綻ばせる希海に、飛脚は覚悟を決めた。  探偵の如く、たかにぃの容姿を聞く飛脚に、希海は神妙な顔をして、「茶色の髪なの」「お目目は、のんと一緒なの。(あか)いのよ」「背は高いの。のんは、たかにぃの肩に手が届かないの」と、自身の持つ情報を一つ一つ伝えていく。  こうして、希海の手紙は、無事、崇史に届くこととなったのである。     ―✿―✿―✿―  後日、崇史が手紙の事を御影に聞いたところ、御影は腹を抱えて笑い転げていたと言う。 番外編 終わり。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!