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「たかにぃ、ですか」
「うん! たかにぃ!」
「その方は、どちらに?」
「えっとね。一ヶ月だけ、南に行ってるの。妖怪退治なのよ」
「ほほー。えーと、うーん。えーと、それは大変なお仕事ですね……」
「うん!」
「それで、南というのは?」
「電車の通ってないとこ。南!」
「ほほほー、成程成程……」
飛脚の脳裏に浮かぶのは、先程別れたばかりの、馴染みの老婦人の言葉。
『黄金色の髪の女の子がね、たかにぃ宛てに手紙を送りたがると思うのよ。送付先を、それっぽく聞き取ってあげてちょうだい。手紙自体は、この封筒に同封すれば良いから』
(それっぽくってなんだ!? これをそれっぽく……?)
天を仰ぐ飛脚に、希海は不安そうに服の裾を引く。
「おにーさん、難しい? だめ?」
「いえ! いえいえいえ、とんでもない! このおにーさんが、たかにぃ様を見つけ出し、お手紙を届けてしんぜますとも!」
「!!」
嬉しそうにふくふくのほっぺを綻ばせる希海に、飛脚は覚悟を決めた。
探偵の如く、たかにぃの容姿を聞く飛脚に、希海は神妙な顔をして、「茶色の髪なの」「お目目は、のんと一緒なの。緋いのよ」「背は高いの。のんは、たかにぃの肩に手が届かないの」と、自身の持つ情報を一つ一つ伝えていく。
こうして、希海の手紙は、無事、崇史に届くこととなったのである。
―✿―✿―✿―
後日、崇史が手紙の事を御影に聞いたところ、御影は腹を抱えて笑い転げていたと言う。
番外編 終わり。
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