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「俺が負けるだなんて・・・・・・。ありえない。何かの間違えだ。そうだ、あれは、たまたまだ。ただ単に運が悪かっただけ。俺は負けてない。強いんだ」
北風さんは怒っていました。太陽さんに負けてイライラしているみたいです。
北風さんは自分の強さを誇示したく、勝負してくれる相手を探してました。
「あそこに、いい相手がいるぞ。今度はあいつで腕試しだ」
北風さんは、どうやら相手を見つけたようです。
「満月さん、満月さん、僕と勝負しませんか?」と北風さんは言いました。
「勝負?いいとも、いいとも。でも、どんな勝負をするんだい?」と満月さんは答えます。
北風さんは、地上を見渡しました。ちょうど街中に、ロングコートを着ている男を発見しました。
「あの男のロングコート、どちらが先に脱がせるかで勝負しましょう」と北風さんは提案しました。
「いいとも、いいとも」と満月さんは快く了承したのです。
「まずは俺から」
北風さんはそう言うと、街中の男に向かってビュービューと風を吹きました。
男は、ロングコートの襟を握り、風が入らないように隙間を閉めました。
北風さんも、二度と負けたくない一心で、さらに強い風を吹きました。
凄い風です。街中の街路樹は揺れ、壁に貼ってあった張り紙は捲れて剥がれて飛んでいきました。
しかし、男は一層にロングコートの襟を強く握りしめ、体を丸めるだけでした。
北風さんは力を使い尽くし、次第に風が弱まりました。
「なぜだ?なぜロングコートを吹き飛ばせない」
北風さんは、とても悔しがりながら言いました。
「じゃあ、今度は私の番だね」と満月さんは言いました。
そして、満月さんは、自分の光を目一杯男に浴びせました。
街にいた男は、胸を張り、襟を持ってロングコートを広げたのです。
「なぜだ?満月さんの光は、太陽さんの光と違い熱を感じないのに、なぜ、あの男はロングコートを脱ぎだすのだ」
北風さんは、満月さんに問いただしました。
「私の光は、人を狂わせる力があるんだよ」と満月さんは言いました。
そのとき、先ほど北風さんが宙に飛ばした張り紙、ひらひらと舞い落ちてきたのです。
そしてそこには、『変質者に遭遇したら110番』と書かれていました。
「キャーーーーーーー」
街に女性の悲鳴が響き渡りましたとさ。
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