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帝国へ(帝国に到着2)
皇帝陛下、皇后陛下に会う気持ちの準備が全く出来ないまま、あれよあれよという間に謁見の間に案内され、
扉が開き、フィーとカレンが普通に歩いて行くから、
ま、待って、まだ私の気持ちの整理がついてないよ!!
と、言える時間もなく、
「スティング・ヴェンツェルと申します。帝国の・・・帝国の・・・太陽、帝国の月と・・・お会い?・・・いえ!その・・・お言葉を交わし・・・、いえその・・・」
あまりの広間の豪華さと、皇帝陛下と皇后陛下の迫力に、頭真っ白で、その後の事はあまり覚えていない。
途中で、フィーとカレンが前に出てきて何か喋って助けてくれたのは、何となく覚えている。
そうして、私ははじめてここまで凹むかと、思うほど凹んで、案内された部屋で沈んだ。
フィーとカレンは色々忙いようで後で行くから、と捨て台詞のように言うと何処かに連れていかれてしまった。
はぁ。
溜息しか出ない。
とりあえず初対面の挨拶は最悪だ。
皇帝陛下と皇后陛下、つまり、2人のお父様とお母様の私に対する印象は、どう考えても、良くない。
何となく記憶に残る限り、皇帝陛下はカレンに瓜二つの顔だった。
そうして、皇后陛下は、フィーにそっくりだった。
ともかく、場を下がる時見せた皇帝陛下のあの顔は、私には興味無さそうだった。
分かってはいた。
フィーがどれだけ私を望んでいても、それは聞き入れる事はないだろう、と。
だって、皇太子にの妻、つまり皇后陛下となる女性が、
こいつ!?
と、不安にというか、論外だ。
恐らく私の招待を許可したのは、私の品定めと、立場を脇まえ、己が無価値だと知れ、という事なのだろう。
大国の貴族令嬢ならまだしも、小国の石ころのような存在価値のない貴族令嬢など意味は無い。
一気に落ち込む気持ちに、認めるしか無かった。
私は、フィーを好きになっている、
と。
殿下を想う気持ちは何時だって本気で、真剣だった。殿下の為なら、たとえ火の中水の中、という例えのように全く苦ではなかった。
その同じ気持ちがフィーにある。
それなのに、今の私は、フィーの足枷のようになっている自分が腹立しく、もどかしかった。
立場は違う。
殿下は自国の王子だが、フィーは帝国の皇太子、つまり、次期皇帝陛下。
産まれた時点で、同じ嫡男でありながら立場も背負う責務も違う。
「これで少しは外に出れたら気分転換になるかしら」
つい、愚痴が声に出てしまった。
「では、宮殿の庭を散歩されてはいかがでしょう」
招かれざる客とは言え、フィーとカレンの友人だ。私に4人ものメイドと、10人位の護衛を就かせくれた。
そのメイドの一人が私の言葉に答えてくれたのだけれど、そういう意味じゃあないんだよね。
「いいえ、宮殿を勝手に出歩いて皆様に迷惑をかけたくないわ」
下手にうろついて、何処で誰に会うかも分からないし、些細な事で外交問題に発展しないとも限らない。
私は2人の友人という立場だが、自国では公爵令嬢でもある。
それ相応の振る舞いを求められるし、それに、フィーとカレンに迷惑をかけたくないから、ここは部屋で大人しくするのが1番だ。
それに、外と言っても、本当に外に出掛けれないのなら無意味。
宮殿は宮殿で、宮殿ガイドブック、と言うのが販売されているけれど、他の観光客と楽しく探索できればいいけれど、そんな訳にはいかない。
それに、こんなぞろぞろとメイドを護衛をつけて歩いてみなさいよ。
目立つし、楽しめないわ。
ちえっ、
だわ。
まあ、どうせ、こちらは関係者以外は立ち入り禁止です、とか言われて、こちらですとか言われて結局は宮殿ガイドブックに載っている決められたルートを行くだけだろう。
正直、カレンとフィーがいるのだから関係者として、色々な部屋を見せて欲しいな、と邪な考えを持っていた。
「そう仰らず、庭園に参りませんか?まだ昼食には時間があります。皇太子と皇女が幼少の頃遊ばれた遊具もあります」
50代くらいだろうか。細身で神経質そうな鋭い顔だが、言い方は穏やかだ。
確かノワールと言ったわね。
それに、あえて私の気を引く内容を言ってくる、という事は、メイド達からも見定めが始まっているのか。
つまり、部屋に籠らずに外に出て、恥をかけ、的な事でしょう。
それにフィーとカレンの話を出してくるところが卑怯だ。断れない。
「それは、是非拝見したいですね。では案内してくださる?」
「勿論でございます」
そう言うしかない。
そうして、ぞろぞろと部屋を出る事になった。
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