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帝国へ(帝国に到着4)
疲れた・・・。
フィーとカレンの誕生日パーティ、やっと2日目だ。
パーティーが始まる2日前に、一夜漬け?いや二日漬けで100人以上の貴族を風采だけで名前と一致させながら覚え、
本番当日にダンスをしながら、
さあ、答え合わせです!!
という国を背負った生き地獄パーティーだった。
ダンスはパーティーにつきものだが、これ程神経を尖らせたダンスは、二度としたくない!!
とりあえず間違えなかった、自分を褒めたくて、コソッと端に逃げジュースを飲んでいた。
はああ、美味しい。
パーティーは選りすぐりった参加者なだけに、ほぼ殿方と全員と踊らなければない、逆に過酷なパーティーだった。
一気に残りのジュースを飲み、ぐるりと見回し、考えた。
まだ、全員の方とは踊ってはいないが、皆様私には興味は無い。
つまり、
逃げよう。
フィーとカレンには申し訳ないが、私主役じゃないしね。
ちらりと見ると、フィーとカレンはまだ、ダンスをしている。
婚約者候補の皆様と踊り、少し会話して、の繰り返しに、2人は全く疲れを感じさせないにこやかな頬笑みを見せていた。
綺麗。
まるで物語のワンシーンのようで、私には手の届かない世界のようだった。
そうかも、しれない。私は偶然友人になっただけのその他大勢であって、
あの輪の中には入れ無い。
「ヴェンツェル公爵令嬢、皇帝陛下がお呼びです」
不意に名を呼ばれ見ると、召使いの1人がたっていた。
「私、ですか?」
「はい。こちらへどうぞ」
何故皇帝陛下が私を?
不思議に思ったが、断れる事も出来ず言われるままついて行くと、本当に皇帝陛下の前に連れて行かれた。
ここに来て何度か顔を合わせたことがあったが、いつも不機嫌で言葉少なく、正直怖かった。
「お呼びでしょうか、皇帝陛下」
軽く会釈し微笑むが、上手く笑えていなのが自分でもわかった。
「呼び立てて申し訳ない」
「とんでもございません」
「セレスティーヌ殿、こちらに」
「はい」
小さく可愛い声と共に、赤に黄色と鮮やかな色のドレスを纏った、可愛い顔の女性が歩いてきた。
確か、セレスティーヌ・エゾリク。
帝国のエゾリク公爵家の2女で19歳。フィーの一番の婚約者候補に上がっている令嬢だ。
「スティング殿は私の子供達が初めて連れてきた友人だ。フィーの好みそうな事を、セレスティーヌ殿に教えてやってくれないか?」
陛下は初めて見る少し笑った顔でセレスティーヌ様を見られると、セレスティーヌ様は恥ずかしそうに扇子でより顔を隠した。
どくり、と胸が苦しくなり、一気に身体が冷えていく。
突きつけれた。
私ではなく、この方がフィーの相手に相応しい、と。
「勿論でございます。では、静かな中庭でお話を致しましょうか?」
「そうだな。では、宜しく頼む」
「はい」
私が返事をすると陛下は、また無表情になり側にいる従者と話をしながら去っていかれた。
「スティング様、私、嬉しいですわ。あ、申し訳ありません。つい嬉しくて、お許しも無く名前で呼んでしまいました」
可愛い声で恥ずかしうに笑い、モジモジし、それでも大きな瞳で私を見てきた。
私よりも背が低く、瞳は大きくはないが黒目が大きいせいか綺麗だ。
明るい茶色の髪は綺麗に巻いてあり、軽やかに動いていた。
「とんでもございません。呼んで頂き嬉しく思います」
「本当に?それなら私も名前で呼んでください。ね、宜しいでしょ?」
甘え上手の声で上目遣い見られると断れない。
スルジニア様を思い出した。
「では、セレスティーヌ様、とお呼び致します」
「私達、良いお友達になれそうよね」
「そうですね」
楽しそうに笑うセレスティーヌ様に頬笑み返したが、どんどん身体が重たくなってきた。
「では、スティング様参りましょう」
「はい」
私達は、中庭に出た。
馬鹿ね、冷静に考えれば分かる事よ。子供の願いを叶えたいのは親として当たり前だが、その願いが、叶えられない願いもある。
それなら、せめて1年だけでも想いを寄せている女性の国で過ごし、いい思い出を作ってあげる、それで子供の願いは叶えられる。
それも、相手の女性は、その国の王子と婚約している。
尚更、叶えれらる訳が無い。
婚約か・・・。
私だって本当なら早く婚約解消をしたい。でもそうなると、私の立場が権力とは遠ざかり、公爵令嬢という上級貴族の箱入り娘になり、王宮に出入りも難しくなる。
だからこそ、私は、今の殿下の婚約者であり、公爵令嬢という立場が最強なのだ。
でも、どうせフィーと共になる事がないのなら、急がなくてもいいかもしれない。
それなら、今はフィーと共に歩む方が、少しでもフィーを理解して貰えるように自分の知っている情報を教えてあげるべきだわ。
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