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帝国へ(帝国に到着13)
次の日の帝国観光はとても楽しかった。
これよ、ここに行きたいの!
私がガイドブックを見せて、フィーとカレン、ザんとターニャに説明すると、少し嫌そうな顔をされた。
こんな所行っても楽しくない、という表情だった関係ない。
帝国に生まれた人達にとっては、観光地、と言うよりも普段の街並みかもしれないが、が、私にとっては大都会である。
次にいつ来れるか分からない。
もしかしたら、二度と来れないかもしれない。
連れてってくれないなら一人で行く!
と言うと、慌てて頷いてくれた。
ふん。当然よ。
ここは、譲らないわよ。
勿論、一杯お土産も買ったわ。
クルリにも、好きなだけ買わせてあげた。
かなり高価な生地や飾りなど、私だけでなく、フィーとカレンも賛同してくれてお金を出してくれる、と言ってくれたから、遠慮なく買いますね、と馬車に載らないくらいに色々買い物した。
うん。いいよ、どんどん買ってね。
ちなみに5度ほどコリュは、おいてけぼりくらい、
「まって―――くだ―――さ―――い―――!!」
と言って、私達の馬車を必死に追いかけてきた。
「見てよ、あれ!!ぶっふふふふ!!」
大爆笑のカレンに、ざまあみろ、と言わんばかりのフィーに、
ごめん、私も楽しく笑ってしまった。
だって、絶対置いてくわけないもん。さすがにここで置いていったら鬼だよ。
でも、コリュはかなりフィーとカレンを怖がっていて、言ってくる言葉の内容が全て本気だと思って、真剣に返してくる。
でも、コリュが本気で追いかけて来る姿のおかげで、皇族と全くバレること無く、周りからも大爆笑される始末。
おかげで、コリュを待つために馬車を止めると色んな人が集まってきて、
久しぶりに面白いものみせてもらったよ。あんたら貴族なのに庶民と仲がいいんだな、
と和気あいあいと話をする事になった。
フィーとカレンは、帝国で過ごす時間が短い為、顔を知れているようで知られてないようで、皆気軽に声を掛けてきた。
勿論、ザンとターニャは冷や汗ものだったみたいだけどね。
さて、次の日はチャリティーです。
基本チャリティーというのは慈善基金集めを目的とした催しです。
つまり、生活に困窮している方々に少しでも生活の足しになるように、安くで品物を提供したり、施設に売上金や、品物を渡します。
貴族の偽善、貴族の暇つぶし、貴族のほどこし、色々言い方をされるのは分かっている。
その通りだ、と今なら言える。
上辺だけは優しいフリをして、心の中では見下し卑下している。
庶民と同じ目線で、というくせに、庶民風に見える高級服をわざわざオーダーメイドする。
そうしてほんの1時間程手伝いをしたら、疲れた、と言ってあとは召使いに全てを任せて自分は帰る。
これが貴族のチャリティーの実態だ。
最後までいる必要はない。
チャリティーに参加した、という偽善が欲しいだけ。
見下しているのに、貴族がチャリティーをするなどと、実に滑稽だ。
寄付やチャリティーをするのに必要なのはお金じゃない。
必要なのは他人を思いやる心だ。
七夕祭りで、アベル達に会っていなかったら絶対に気づかなかった。コリュが言うように世界が違いすぎる。
でもね、今なら少しは分かるよ。
だから、私に出来る事をやりたかった。
「お姉ちゃん、ビビなの?」
籠にお菓子を入れ、売り子として働く私に、お母様と一緒にいる小さい子が指を指してきた。
「あら、本当だわ。そっくりね」
「分かりました?このお菓子を買ってもらおうかな、と思って仮装したんです。似てますか?」
「うん!似てるよ!ねえ、母さんお菓子買ってあげようよ」
「そうね。じゃあ3つ貰おうかしら」
「ありがとうございます」
お金を貰いお菓子2つをお母様に、1つは膝をつき目線を合わせ、子供に出した。
「ねえ、リオン。このお菓子がきっと事件の解決に繋がるわ。だって、甘いものは頭を落ち着かせてくれるもの」
そう言って渡すと、ぱあっと嬉しそうに笑ってくれた。
「それ、本に載ってたよ」
「そうよ。リオンは何て答えか覚えてる?」
「うん。もう、ビビったら私そんな単純な人間じゃないよ。でもまあ、くれるんなら貰うよ、だね!」
「ご名答。さあ、これ食べて色んな推理をしてみて」
「うん!ありがとう!」
嬉しそうにお菓子を受け取ると、お母様と一緒に私に手を振り帰って行った。
「お嬢様、したたかになりましたね」
感嘆の声でクルリが追加のお菓子を籠に入れてくれた。
「ふふん。でしょう。この格好だと声をかけられるのよ。それに、本当にビビになった気分になって楽しいの」
「ですよね!だってお嬢様、とってもビビにそっくりですもの!」
「あの、そのお菓子下さい」
また、声を掛けられたが、やはり、私の格好をチラチラ見ている。
「ありがとうございます。もしかしてわかっちゃいました?」
そんな意地悪な私の言葉に、
「分かりました!ビビですよね!!」
と、皆が乗ってきてくれる。
こんな楽しいチャリティーは初めてだった。
あんなにクルリのビビに似ている、と言うの言葉に恥ずかしくて、否定的だったのに、クルリが戻ってきたらビビの格好をしてあげる、と決めて、いざ自分の意思で来てみたら楽しくなった。
自分が楽しめると、口から出てくる言葉も違う。
とても前向きでみんなに楽しめる内容が勝手に出てくる。
おかげで、とてもお菓子が売れた上に、握手まで求められた。
共通点、と言うのはとても大事なんだ、と今更思った。
だって、貴族とか平民とか、貧民とか、帝国民とか、本、には関係ない。隔たりなく会話が出来、嫌な気持ちにならない。
私、成長したな。
と、思った。
ふと今の状況に自分の器が大きくなった、と嬉しくなった。
いや、まだまだ成長過程か。
フィーとカレンの顔が浮かび、少し自意識過剰になった自分が楽しかった。
あとは、2人の神対応を色々見て楽しかった。
ちなみに2人も同じようにお菓子を売っている。
フィーは若い女性によく声掛けられあとは、酔っ払ったおじさんや、若い男性にもよく絡まれていた。
それに対して嫌な顔をせず接していたが、特に凄い!と思ったのは、
平民だけれど、金持ちらしい人が、
「おやおや皇太子様。わざわざ帝国に帰ってきたのに、こんなつまらない事をやっているのですか?どうせ、毎回やらさてれているのでしょ?チャリティーの意味を分かっているのですか?」
と、嫌悪感丸出しで言ってきた。
それに対してフィーは、
「帝国で過ごす期間が短い私をご存知とは、有難く思います。感服いたします。帝国の行く末を想っておられるのですね。確かに、このチャリティーは行事で決まっていましたが、貴方に出会う事が出来たのなら、とても有難く思います。勿論チャリティーの意味は理解しております。つまり、貴方様はより寄付をされているという事ですね、ジュウダル様」
いやあ、最後に名前を言うところが憎い。だってその方は名前を言われ一気に顔が引きつり、固まった。で、調べてみると全く寄付してなかったけれど、帰りの際にかなりの寄付をしてくれていた。有数の商人らしいが、馬鹿にしたくてあえて皇太子、と言ったのが裏目に出たね。
さっすがフィー。
次にカレン。
「お買い上げありがとうございます。宜しければお子さまのお名前を聞いていもいいですか?」
さり気なく、微笑む姿に見惚れた。
皇女様だ。
とても自然で柔らかい物腰で、慈愛を感じる。
これもまた、カレンの本当の姿なんだ。
そうそう名前聞いた後がねこれがまた凄いのよ。来る子供来る子供名前を聞いて、後ですれ違ったり、後から話しかけても、ちゃんと間違いなく名前を言ってるの!
それをどうもお母様方は知っているいるようで、カレンに並ぶ列には親子連れがとても多かった。そして、大人気だった。
参加してよかった。
2人をより大好きになった。
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