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帝国へ(帝国に到着15)
「公爵令嬢こちらです」
「はい」
適当に返事をしながら目線は動かなかった。
塔、間近で見るとおっきい!!
夏の青空に乳白色の塔はよく映え、輝き、目が離せなかった。
何よりも、昔からガイドブックしか知らない塔が、今、目の前にあるんだよ!
感動と嬉しさに頭が働かなった。
「歩いてください」
はあ・・・。圧巻だわ。
「スティング、歩いてよ。皆待ってるよ」
からかうカレンの声にはっと周りを見ると、フードを被る神官の顔は分からないが、皆が足を止めこちらを向いていた。
「も、申し訳ありません」
「後でちゃんと見れるから大丈夫だよ。さ、こっからが大変なんだからがんばろー!」
どういう意味だろう。
でも、直ぐにわかった。
甘かった。
五つの塔の土台の部分は神殿となり、特別な祈祷をする時に使用するらしい。その神殿に5つの階段がり、それぞれの塔へ上にそれぞれの祭壇がる。つまり、登る事となる。
そう、ひたすら、登るのよ!
外から見ても十分そびえ立っている塔を、螺旋階段を永遠と登るの!
はあ、
きついよお。
はあ、
疲れたよお。
足パンパン。
夏とはいえ、塔はまだ涼しかったが汗だくになってきた。
フィーとカレンも疲れた顔をしていたものの、慣れているからどんどんどん上がっていく。勿論私を待てる訳もなく、待つのは神官達だけれども、待たれるのも悪いから頑張って登るんだけど、
もう、疲れた・・・。
「あと少しだから頑張って」
爽やかな声とともに、私に長い指を持つ手が差し出された。
若い男性の声だ。
顔を上げると白装束を着た背の高い人が振り向く格好で手を差し出していた。
やはり顔は見えない。
「さあ、もう少しだから頑張ろう」
優しく励ます声に手をとると、軽く握られ引かれた。
気持ちの持ちようなのかもしれないが、足が軽くなったような気分になり、登る事が出来た。
「貴方様は不思議な色ですね」
「色?」
あまりの私の足の遅さのせいなのか、私とこの神官だけになっていて、何か考えるようにそう言われた。
「人の世を混乱させる渦の中にいる。様々なもの貴女の周りで渦巻いている。近き事とすれば、子供に気をつけて下さい」
「神官、様?」
何を指しているのかわかないが、淡々と無表情にいう内容は、私を驚かせるに十分だった。
「さあ、着きましたよ」
いつの間にか塔を登りつめ、その方はすっと手を離すとさっさと歩き神官達が集まる場所へ動いた。
「お待ちください!どう言う意味ですか!?」
「どうしたの、スティング?」
カレンが私の側に来たが、申し訳ないがそれを無視して神官達に近づこうしたが、他の神官に止められた。
「申し訳ありませんが、その奥へは御遠慮下さい」
「は、い。申し訳ありません」
もう、先程の人がどこにいるのか分からなくなった。
「スティング?」
フィーが心配そうに声をかけてきた。
「ごめん。後で言うわ」
私の言葉に小さく頷き、こっちに、と言われカレンが待つ場所に歩いた。
光の神殿の祭壇は入口から向かって真正面にあった。石像で造られた光の女神像が微笑み右手をかざしている。
その横にな小さな机があり、香を焚いている器や硝子の石や、見た事もない形の動物かな?が置かれていた。
部屋は意外に広く窓が幾つもあり、柔らかい光と風が差し込んでいた。
そして光の女神の石像の前に、一筋の光が頭上から降り注いでいた。
まるでそこに跪くと女神の手が自分に手を伸ばしているかのようにか見える。
見上げると塔のてっぺんは硝子張りになっているのだが特殊な加工を施しているのだろう。柔らかな、まるで月の光のように滲むような光が、一点にそこに照らしていた。
そうでなければ夏の灼熱の太陽の日差しをまともに浴びてしまって、大変よ。
「では、始めましょうか」
厳かな声が左の方からき声、向くと、その年輩の方は白装束のフードを外し柔らかく微笑んでいた。
教皇だ。
すっと、私もそうだがフィーもカレンも頭を下げた。
「皇太子様からこちらどうぞお越しくだい」
優雅な緩慢な動ぎで、やはりその光の場所を指した。
フィーが恭しく跪くと、やはり光の女神の手がかざしてくれていた。
教皇はフィーの横に着くと、祈りを始めた。
正直何を言っているのかわらかなかったが、低い声は心地よくとても気持ちが洗われるようだった。
「皇太子様は、前と少し変わられましたね」
祈りが終わるとフィーの肩を触り噛み締めるように言い出した。
「とても明るい色になられた。出会えた方が変えて下さったのでしょう。少し危うさを見えますが、これからも御自分の意志に従いお進み下さい」
お告げだ!
さっきの人と同じ例えをしている。
色、とはなんだろう。
「はい。ありがとうございます」
フィーは立ち上がると女神の石像と教皇一礼し、私達の側に戻ってきた。
「次は皇女様、こちらへお願い致します」
「はい」
フィーと同じようにまた跪き、教皇の祈りが始まり、終わるとお告げを言った。
「皇女様も色が変わりましたね。前に比べ少し成長されましたね。これもまた、出会われた方の影響でございます。怪我にお気をつけください」
フィーとは違う内容に、体が強ばった。
怪我?もしかして私のせいで?
「はい。ありがとうございます」
答えるとカレンは、私の横に戻ってきた。
「最後に、セクト王国ヴェンツェル公爵令嬢、こちらへお願い致します」
「はい」
呼ばれ、光の筋に膝をついた。
低い声が頭に浸透するように、溶け込んでいく。焚かれた香木が心を癒すものかもしれないが、とても気持ちが穏やかになった。
「変わった色をお持ちですね。とても冷たく鋭い色でありながら、他の色も混ざっている。だがとても危険な色が濃い。お気をつけ下さい」
少し離れたから、これでお告げが終わりなのだと察し立ち上がった。
「ありがとうございます」
光の女神と教皇に一礼し、2人の元へ戻った。
その後は小さい机に置かれていた硝子の石を、光の女神の加護を受けている、と言われて厳かに渡され、これで終わりとなり塔を降りた。
塔をおり、祈りの祭壇の控え室で、白装束を脱ぎ私達は普段の服に戻り、この後は、神官が色々な場所を案内してくれる約束になっている。
中庭でクルリやリューナイト、ザンやターニャ、帝国騎士団と合流し、次は観光だ、と嬉しいはすが、階段で言われた言葉と、教皇様からのお告げの言葉が、気になってしようがなかった。
けれど、ここでまた考え込めば皆に迷惑をかけるし、心配されるだろう。
気持ちを変え後で考える事にした。
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