帝国へ(帝国に到着16)

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帝国へ(帝国に到着16)

「光の神殿を中心として、多彩な向きに道が出来ております。それは、光の女神の道筋ではなく、世界全ての国の中心に向かって伸びているのです」 フードを被り下を向き、抑揚なく淡々と説明するが、微かに滲ませた得意げな感情に気づいてしまう自分に、白々しい気持ちになってしまう。 ごめんなさい、知っています。 「各国の中心に光の女神の恩恵を与えるれるよう、光の女神が初代帝国皇帝にお告げを授けたのです」 知ってる。ガイドブックに載ってました。 「ヴェンツェル公爵令嬢の国、セクト国へはこの道でございます」 案内役の神官が、更に得意げに説明してくれたが、すみません、全部知ってます。 が、ここは公爵令嬢としての礼儀は弁えています。 「まあ!これがそうなのですね。とても心が穏やかになるようですわ」 優しく微笑みながら感服するように言うと、小さく頷きを返した。 心の中で大きく、ちっ、と言ってしまいました。 だって、セクト国に出ているガイドブックの表紙に書いてあるもん。 私の答えにとても満足した空気を有り有りと出し、次の説明に入ったが、ごめんなさい、 しょーじき、つまらないです! だってこの神殿の敷地内の説明は、全てガイドブックに乗っているものと同じで、こう言ってはなんだけど、全部知ってます。 もう、何十回も読み、新しいガイドブックが出る度に購入し、隅から隅まで、何回も読んだ。 それくらい私は、帝国に憧れていた。 お父様やお母様、お兄は私がここまで帝国に行きたいと知らないと思う。 知っていたら絶対に、長期の休みに連れてきてくれただろう。殿下に振り回されている私をいつも心配してくれていたから、少しでも私の気晴らしになる事を色々考えてくれていたもの。 私の小さい憂さ晴らしだった。 殿下に尽くしたのに、掠めるようにすれ違い、その辛く凍える気持ちを救ってくれたのが帝国のガイドブックだった。 些細な事、と言われるかもしれないが私にとって帝国は、 夢の国、 希望の国、 だった。 その気持ちの支えの帝国にやっと来たのに、この程度の説明ですか、と残念に思うのは仕方ないでしょ。 洗脳された暗黒の時代の中でも、揺るぎなく私の中心となった帝国だからこそ期待していただけに、このマニュアル通りの説明に幻滅だわ。 だが、洗脳、とは そこに悪意ある感情が存在し、 確実にかけた人間の深層がある。 そこに、この戦いの答えが、ある、と私は思っている。 「ねえ、喉乾いたよね、スティング」 神官達様が案内してくれる中、うんざりとカレンが言ってきた。 「うん。ちょっと疲れたかなあ」 神官が説明してくれるのはいいのだけれど、かなりゆっくりと丁寧だから、全然進まないし、その上休憩場所は限られているから簡単に休憩が出来ない。 それも暑いのに、その辺の売店で飲み物も買えない。 皇太子と皇女、それにその御友人に安全が確保されていない場所はご案内できませんし、怪しげなものは与えられません、とおっとりと説明があったが、それだったら何か考えなさいよ。 と言うよりも観光に来ている人は、休憩所で休んでいるし、露店で買ってるよ。 既に安全は確認されているのに、こういう時だけそう言うのはおかしくない!? 只でさえつまんない説明に飽き飽きしている上に、炎天夏の下で喉も乾いて汗だく。 流石にイライラしてくるよ。 「スティング疲れたか?そろそろ、帰るか?」 フィーも疲れたようで、聞いてきた。 「帰れるの?まだ、全部終わってないよ」 コソコソと言いながら正直それは嬉しい。さっきの言葉を相談したいし、ガイドブック通りの説明に飽きてきた。 「適当なこと言えば帰れるわよ。それよりもスティングはそでいいの?楽しみにしてたんじゃない?」 「うーん、これは観光になんないよ。だって私の知っている内容ばかりだもん。それに、光の塔の神殿以外はこの感じたと、普通に来ても見れるみたいだから、もういいかな。あとお土産も買えないし、ゆっくり見れないし、これじゃあ観光じゃないよ」 「じゃあ任せといて。ターニャ」 なんだか意地悪な笑みを浮かべるとカレンは側にいたターニャを呼び何か話をすると、ターニャは直ぐに神官に話をしに行き、神官は頷くとやはり顔を見せないまま私達をの方を向いた。 「では、これで終わらせて頂きます。最後に塔の神殿にお願いします」 深くフードを被ったまま、その方は言うと神の神殿にの方に歩き出した。 「なんて言ったの?」 私がカレンに聞くと、ふふっと嫌な笑いをした。 「スティングが飽きているから終わらせて、と言ったの」 「ちょっと、そんな事正直に言ったの!?」 「うん。だって、飽きた顔してたじゃない」 「・・・そんな顔してた?」 「してたよ。つまんないなあ、という顔してた」 それは、失礼で、恥ずかしい。 「いいんじゃないか?今は凄い素直に顔に出るから俺らは楽しいよな、カレン」 「そうだよ」 「そういう問題じゃないよ!まるで私が説明が悪くて飽きているみたいじゃない!」 「そうでしょ?」 「そうだろ?」 「そ、そうだけど、もう少し柔らかい言い方してよ」 「ほら、やっぱりそう思ったのなら別にいいじゃん。私達が言ったら角が立つけど、大丈夫!スティングだから」 「同感だ。スティングなら許される」 「意味わかんない!」 「少しお静かにお願い致します、公爵令嬢」 近くにいた神官が声をかけてきた。 2人には言えないから、私にだけ言ってきたのだろう、と分かっていたが、元々私が顔に感情を出していたからこうなってしまったんだ。 もう!フィーもカレン笑ってるけど、2人も飽きてた顔してたじゃない! そうは思うが恥ずかしくて顔をあげれなかった。
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