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帝国へ(叔父様達4)
陛下とラギュア様は幼少の時から仲が良く、いつの頃からか恋仲になったという。
それは、家同士も知っている事だっから立場的にも、家柄的にも問題もなく婚約したと聞いている。
だが国を飢饉が襲った時、グリニッジ伯爵様の提案を受け入れてしまった時点で、婚約は破棄された。
誰もが仕方が無い、直ぐに忘れるだろうと思っていたのに、2人の気持ちはそんな上辺だけのものではなかった。
それは、ラギュア様が陛下の側室でもいいから側にいたい、と申し出た言葉に、やっと周りは本当に愛し合っていたのだ、気付かされた。
侯爵の息女が、側室になる例は無い訳では無いが、政治的な見返りあっての打算だ。
そうでなく、ラギュア様は、いいや、陛下もお互い側にいたいと望んでいた。
そうして、側室となったが、当然その寵愛をグリニッジ伯爵様も王妃様も黙認することも無く、私に対するような嫌がさらせをされていたらしい。
そのあまりの仕打ちが尋常ではくなったのが、ラギュア様が懐妊してからだ。王妃様はラギュア様を、誰がいても憚りなく叱責し、罵倒し、騒ぎ立てた。その上、毒まで盛られる事が何度もあり、ラギュア様の身の回りをしていたメイドが何人も亡くなった。
お腹に子供がいるのに毒なんて飲まされたら、子供の命も、ラギュア様の命も、もしかしたらもう2度懐妊出来なるかもしれないかもしれないのに、本当に酷い事だ。
でも、王宮での味方が少ない状態で、召使い達はラギュア様をよく護ったものだと、その強い意思に感服させられる。
正妻である王妃様が先に懐妊していれば問題なかったのかもしれないが、一身に寵愛を受けたラギュア様の先の懐妊。
憤りを感じる事もあるのも分かるが、常識を逸した行動に、陛下もラギュア様も心身ともに疲れ果れはてていた。
ラギュア様はソウルバ侯爵様と公爵様達の手助けで、どうにか出産出来たが、そのまま王宮に留まる気力はもう残っていなかった。
当然だろう。
自分の為に何人も死んだのを目の当たりにし、また自分も死と隣り合わせで、まともな精神でいられるわけがない。それも、自分だけでなく、産まれた我が子も護らなければならない。
どうにか出産を終え、出産後ラギュア様はソウルバ侯爵家に帰り、子供と自分の気持ちが落ち着くまで過ごす事に決め、安穏な日々を送っていた中、誰かが、ソウルバ侯爵家に忍び込み火を放った。
それが誰かは今も分かってはいないが、放火と言うのは確実で、誰が考えても王妃派である事は明白だった。
けれどそれを逆手にとり、ヴェンツェル公爵家とティーチェ侯爵家とが隠密に2人を他国にいる叔父様に託した。
叔父様は嫡男でありながら、当主の座をさっさと放棄し国を出、優雅に自分のやりたい事ばかりをやっていたから、貴族の中でもはみ出し者だった。
そのため、足取りを探されることも無く、今に至る。
何故叔父様に託されたかは聞いていはいないが、ただ、全てが秘密裏に動いてたのは理解出来たから、きっと私の知らない色々な事情があるのだろう。
叔父様は帝国にいた方が仕事が楽なので、数年前から帝国で暮らし、表向きはラギュア様と夫婦として一緒に暮らしているから、怪しまれない。
それと1年に数度は、叔父様はセクト王国に帰ってきて、状況確認しながら、ラギュア様とカンタラ殿下の様子を報告していた。
風来坊の叔父様はいつも社交界でも、親戚が集まった時でも、空気を読まずに
む・だ・に!
陽気に喋り出し、
む・だ・に!
勝手に動き出し、
む、だ・に!
姿を消して、
本っ当に!
神出鬼没の風来坊なのだ!
貴族の中で1部の人しか相手にしてくれる人がいないから、ノーマークの人なのだ。
だから、これまでラギュア様とカンタラ殿下の存在は隠し通してくれた。
そこは認める。
認めるけど、私とは合わない!
と顔を見せ話をする度につくづく思う。
ともかく、ラギュア様とカンタラ殿下の存在を説明した。
これは、クルリもリューナイトも知りえない内容だっただけに、呆然としていた。
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