どうして

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どうして

どうしてだろう? 何故私のこの気持ちが伝わらないのだろう。 あなたはこの国の第1王子なのよ。 その婚約者として、この国の三大公爵家の1つ、ヴェンツェル公爵家の息女である私が選ばれたのだから、普通の婚約ではないと分かっているはず。 この国の行く末を決める大事な事で、 誰よりも、あなたに相応しくて、 誰よりも、あなたの事を考えている。 それも、卒業したら直ぐに婚約披露パーティーが行われる、高等部3年のこの時期も大事なのに、 どうして分かってくれないのだろう? 私もあなたの側に生まれてずっと側にいるのに、何故、私の気持ちを分かってくれないのだろう。 いいえ、私があなたを慕っていることは知っているはずなのに、どうして、こんな酷い仕打ちをするの? レインがあなたの乳母の孫で一緒に遊んでいたのも知っている。 でも、 私だって生まれた時から、同じ歳と言うことで、婚約者になった。 私だって、あなたの側にずっといたわ。 私は・・・あなたの為に、努力してきたのに、 どうして分かってくれないのだろう。 この胸の痛さには、あなたを見る度にいつまでも慣れない。 殿下・・・私はあなたを愛している・・・。 何故、 何故、 少しも分かってくれないのだろう? レインの桃色の髪と可愛らしい顔と声が好きなの? 確かに私は可愛くはない。いつも冷たい目だと言われる。 私は、緑色の髪に、茶色い瞳。 それが気に入らないの? どうしたら殿下の気持ちが、あの頃に戻ってくれるのだろう? 懐かしい、楽しかった日々が思い出される。 レインが現れたのは高等部に入ってからだ。それまでは、他の学園に通っていた。 この学園は、本来なら貴族だけが通う格式ある学園だが、秀でた平民は特待生として入学が出来る。レインは乳母の孫という事で、王宮の出入りを許され、少しは教育をされていた。 そのせいもあるが、元々学問は秀でていた。 入学が決まったと、嬉しそうに報告したあの時の、レインに、微笑みかけた、殿下の顔が今でも忘れられない。 あの日から全てが変わった。 穏やかで、 少しプライドが高く、 でも、私に優しく手を出してくれた、 愛しい殿下は、 消えてしまった。
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