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なぜか冷静さを保ち続けている住職。その姿は余計に私に苛立ちを覚えさせた。まるで満月が後押ししてくれているように。
悪いのはお前だ。お前が悪い。なにもわかっていないお前が。お前だ。お前だ。お前が悪い。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前が。お前だけが悪い。お前が。お前が。お前を。お前を。お前を。お前を。お前を。お前を殺す。
かがり火の炎を掴み、その男に投げつけた。火は一瞬で燃え上がり、住職の着ている袈裟が赤く染まっていく。
「うわあああ! 誰か、助けてくれぇええ!」
彼はすべてをかなぐり捨てて、石畳みの上に転がり続けた。それでも炎が消えることはない。
スタッフたちが慌てて着ていた洋服などを叩きつけて火を消そうとする。そんな程度のことでこの炎が消えるわけがない。憎悪の炎は、すべてを焼き尽くすのだ。
「救急車! 救急車だ! 早く、早く呼べ!」
「どうすんだよ! ヤバいって、ヤバいって」
動き回っていた住職は、やがて力尽きて動かなくなった。赤い炎は未だに燃え続けている。
私は空を見上げた。黄色いまん丸の月は、笑っているような気がした。
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