ちがう、ちがう

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 そんな理由もありまして、私はどこかの心霊スポットを探していたわけです。有名なところに行ったぐらいではそのアンチも納得しないだろう。どこかまだ誰も行ったことのない場所はないか。色々な知人に相談したところ、とある山の存在を知ったんです。  その山には恨みを晴らしたいと思う人間が自然と集まってくる。  私は興味を注がれて、すぐに車を飛ばしました。私が住む場所からは車で一時間程度のところでした。真夜中、付近に車を停めて私はいざその山の中へと入って行ったんです。辺りは当然のように真っ暗闇。月明かりだけが頼りでした。  もしその知人の話が本当ならば、なんとか撮影をしたい、そう思っておりました。しかし、そんな都合よく呪いをかけようとしている人物が見つかるはずもなく、初めはただひたすらに山の中をうろつく程度でした。誰もいないその山は薄気味悪く、なにかが出そうな雰囲気を漂わせていて、一応暗闇でも撮れるカメラを持って撮影もしていたのですが、幽霊というものは出てほしいときには一切現れないものなのですね。なにも映らない映像に嫌気がさしながらも、時間を見つけて私はその山を訪れ続けました。たった一人で。  それからしばらく経ったある週末。その日は奇遇にも満月の夜でした。さすがにアンチからも催促のようなコメントが届くようになり、私自身も焦りを感じはじめていた頃です。  いつものように山へ向かい、車を停めると、なんと真夜中にも関わらず一台の軽自動車が入り口に停まっていたのです。若い女性が乗るような可愛らしい感じの水色のコンパクトカーでした。  私はピンと来ました。これはもしかして、もしかするぞ、と。ライトを車の中に当てても人の気配はありませんでした。肝試しに来た大学生の可能性ももちろんありましたが、私には呪いをかけようとする女性だとしか考えられなかったのです。理由などありません。私の願望でした。  そして私は恐る恐る山の中へと入って行きました。  相手に見つかってはいけないため、ライトをつけるわけにはいきません。そんな人間を堂々と撮影できるわけもありませんから。  私は暗視ゴーグルを目元に装着して山の中を歩いていきます。現代の技術の進歩というものは恐ろしく、そのゴーグルもとても性能が良くて、真っ暗闇の森の中がまるで昼間のように明るく映るのです。  周りは木々で溢れておりまして、どこを見ても同じような景色ばかり。GPSを駆使して、その開けた場所へ向かって行きました。
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