何が……起こったの?

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何が……起こったの?

 移動先は昼間だった。ふたりとも「移動した」ということを即座に理解した。ユウナギはナツヒに飛びついていたので、慌てて彼の胸から離れる。そして彼の様子がいつもと違うことを思い出し、距離を開けようとした。  だが当のナツヒは、ここで彼女を解放するつもりはない。彼にとっては彼女こそいつもと違っていて、ほぼ無意識にそれを問い詰めずにはいられないのだ。 「おい、こっち向けって」 「どこか来ちゃったみたい、探らなきゃ」 「なんでこっち見ねえんだよ!」 「なんのこと?」 などと軽く押し問答をしているふたりに。  その頃、真っ直ぐ向かってくる人影が。  それはふたつか。しかし彼らの視界に入るはずもなく。 「本当に、まず、ここはどこなのかとか調べなきゃ……」  ユウナギはナツヒを振り払い、走って行こうとした。そして小石につまずき、こてっと転んだ。  その間、全力疾走の足音がふたりに近付いてきて、その主が衝突するかというところだ。が、ナツヒはやはりそれどころではない。  ユウナギのことで夢中の彼に、転んだ彼女に手を差し伸べようとした彼に、今まさに突進するかという瞬間。  小柄なその人物はぴたりと足を止め、ナツヒの頭を両手で押さえ、唇に唇を押し当てたのだった。 「!!?…………」 「…………???」  ここで、ナツヒは頭が完全に真っ白になったので、放っておくとして。  膝をついたままのユウナギの位置からだと、見えるのは小柄な人物の後ろ頭のみで、何が起こったかよく分からない。が、自分たちの間に他人が割って入ってきた、ぐらいの認識はある。  そこにもう一人やってきた。こちらは大柄な男だ。  そこでその小柄な人物は、ナツヒの口から口を離して宣言する。 「この人が僕の情人です。そういうわけで、もう諦めてください」  ユウナギはとっさに真に受けて、「んっ??」と小さく声を上げた。  追いかけてきたもうひとりの男は、狼狽の色を見せる。 「そんな……嘘だろう?」 「こんな白昼堂々口づけを交わす仲が、嘘のわけないではないですか」 「口づけ?」  ユウナギは「あ、今の、そういう……?」とふんわり思った。 「あと、このことは僕の両親に内密にお願いします。心配かけたくないので」 「分かった。君のことは……諦めよう。無理強いはしたくない……」  気落ちした大柄な男はトボトボと立ち去った。
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