初めてって決めつけるな! (※初めてです。

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初めてって決めつけるな! (※初めてです。

「ああ、助かりました」  ユウナギの目に映る、この屈託のない人物は、顔立ちのとても可愛らしい子どもだった。  その場のユウナギの理解度を10段階で5とするなら、ナツヒは思考回路が働いていないので測定不可である。 「本当にありがとうございます。不躾な真似をしてしまい申し訳ありません」 「いえいえ」  ナツヒが固まっているので、ユウナギが代わりに答えた。  しかしナツヒを気付かせないことには、と、ユウナギは頬を叩いたりするのだが、まだ返事はなく。 「あ、あの大丈夫ですか?」  原因の張本人も心配になってきたようだ。 「まぁ急にね、人がぶつかってきたらそりゃぁもう驚いて、こうなっちゃっても仕方ないよね。ところであなたは……男?女?」 「僕はもちろん男です。名をサダヨシと申します! 兵士志望で歳は12です!」  彼は元気よく答えた。 「男の子だったかぁ……」  その時ナツヒがぴくりと動いた。意識が戻った模様。 「あ、大丈夫でしたか? 歯がぶつからないように直前で計ったんですけど、痛い思いをされましたか?」 「……いや……」 「そうですよね、僕も別に痛くなかったし!」 「直前で計ったって?」  ユウナギは興味があるようだ。 「どれほどの角度や圧力で重なり合えば、鼻や歯をぶつけずに押せるか、を寸でで考えてみました」  彼は嫌味のない笑顔で答える。 「へぇ~~。というか鼻や歯がぶつかることもあるんだ?」 「……おい……」 「はい?」  ここからナツヒが怒り狂った様は、ユウナギですら初見といったほどの暴発具合であった。少年はその場で地に額を付け平謝りすることとなった。 「ごめんなさい、まさか初めてだったとは……」  ナツヒが声にならない声を上げ更に憤慨するのを、ユウナギは隣でなだめる。 「まぁ、まだ12の子のしたことだし」 「でも僕も初めてだったので! 初めて同士の割りに、やはり事故にならずに済んで……」 「~~~~~~!!」  その日ナツヒの機嫌が直ることは最早なかった。  そこでユウナギはサダヨシの身なりを見て、彼が身分のある家の者であると判断した。 「父は(むら)の役人で、兄たちは中央預かりの兵士です!」 「じゃあ、暦は分かる?」 「今は分かりませんが……役場で尋ねれば。まず家に帰って……」 「家かぁ……私たち、旅をしてるんだけど。どこか泊まれるところないかな?」  ユウナギの割りには含んだ言い方をする。ナツヒが使い物にならない時は、彼女が穴を埋めるよう頑張るのだ。 「先ほど助けていただいたお礼に、父に頼んでみます」 「ありがとう! これで旅の第一関門突破だわ」
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