月夜の天使 -月明かりの魔法店-

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 あれから十年。今日は夜空に美しい月が出ている。僕は駅前のベンチに座って空を見上げ、あの天使のことを考えていた。  この世界に別れを告げようとする最後の最後に、あんな導きを受けるなんて。まるで神様がいて、僕に希望を捨てるなと言ってくれたような。あの女の子が天使なら、店主さんこそ本物の神様だったのかも。  あの後何度か店を訪れようとしたが、お地蔵様の祠も、森の小道も見つけられなかった。今では、あれは夢だったのではないかと思い始めていた。 「お母さん」  しばらくして、一人の女の子が手を振りながら近づいてきた。高校の制服を着た、色白で目鼻立ちがくっきりした可愛らしい少女。あの時の天使そのものだった。驚いて見ていると、隣のベンチに座っていた女性が立ち上がった。 「待たせてごめんね、生徒会の仕事が長引いちゃったの」 「大丈夫よ。そんなに待ってないから」  女の子は嬉しそうに、女性と腕を組んだ。
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