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振り返ると、女の子はテーブルに突っ伏して眠っていた。店主さんがそっと毛布をかけている。
「ありがとうございました。お陰でやっと落ち着いたみたいです。泣き疲れて眠ってしまいました」
「僕、その子が空を飛んでいる姿を追ってここに来たんです。人間……なんですよね?」
店主さんはにこりと笑うと、女の子の髪をそっと撫でた。
「人間だからこそ、悲しみに耐えられずに、心が一杯になってしまったのです。生きていれば色々なことがあるでしょう。そんな時は、無理せず吐き出してしまう時間も必要なのです」
「……そうですね」
僕より小さい彼女が、あんなに大きな悲しみを背負って、踏ん張っていた。なんだか無性に恥ずかしくなって、僕は天を仰いだ。
「大丈夫ですか? もう少し魔法が必要ならお売りしますが」
「……いえ、もう十分です。お世話になりました」
僕は席を立ち、女の子のあどけない寝顔をそっと覗き込んだ。
「まるで、天使みたいですね」
「ええ、わたしもそう思います」
僕は店主さんに挨拶すると、少し後ろ髪を引かれる思いで店を出た。
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