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背後の茂みががさがさと揺れる。檻の外に現れたものを見て、少年は言葉を失った。
大きな頭に、左右二本づつの腕。太い三本の脚で、カメのようにゆっくりと近づいてくる。それが全部で四人もいた。地球の生き物ではないと、一目で分った。
「ぼ、僕を食べても美味しくないぞ!」
後ずさりしながらわめくと、驚いたことに、相手は日本語で話した。
「安心しなさい。我々は地球の動物を調べるためにやってきた、ただの生物学者です。長年の研究で、ヒトの言葉も心得ているので、このように会話もできるのです。身長と体重を測って、サンプル用に髪の毛を一本抜いたら、すぐに逃がしてあげますよ」
異星人たちの言う通り、少年はすぐに解放された。怯えながら、少年は訊ねた。
「昔、地球に攻めてきた宇宙人っていうのは、お前たちのことだな。何のために、人間を滅ぼそうとしたんだ」
異星人たちは、びっくりしたように顔を見合せた。
「滅ぼすだなんて、とんでもない。ただの個体数の調節です」
何を言っているのか、少年にはよく分らなかった。異星人は説明した。
「我々は五十万年前に地球を発見して、長いあいだ、ここに暮すさまざまな生き物について研究してきました。ところが、近頃はヒトが大量発生して、森が丸はだかにされたり、他の動物が喰い荒らされたりするようになったのです。磯焼けならぬ、地球焼けです。そこで、余分なヒトを駆除して、豊かな自然を取り戻そうとしたのですが……」
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