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11.また今度ゆっくり
「ふうん、『月夜の遭遇』なんてずいぶんと洒落た名前ですね」
カウンターで彩夏がクッキーのパッケージを手に取って言った。
「晴人くんが考えてくれたんですよ」
マスターが彩夏と里穂にそう告げた。
晴人はテイクアウト用の窓口で接客中だ。
「なにか意味があるんですか?」
里穂がマスターにたずねる。
「丸いクッキーが月みたいだし、人と人との出会いを大事にしたいってことがこの店のコンセプトでもありますから」
マスターは晴人の説明を思い出しながらそう告げた。
「いいですねえ」
彩夏の言葉に、マスターは満足そうにうなずく。
「そういえば、ついでに聞きたいことがあるんですけど」
里穂がそう切り出した。
「なんでしょう?」
「この店の名前って、なんでレイン……」
その瞬間、店の入り口のドアが開いた。新しいお客さんだ。
「いらっしゃいませ」
新しいお客さんに対応をはじめたマスターに里穂が告げる。
「お店の名前の話、また今度ゆっくり聞かせてくださいね」
(おわり)
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