猫の恋

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やさしく頭をなでられて心地よく目を閉じた。 そうすればまるで猫のように見えると、よく言われることを思い出す。 なんなら喉も鳴らそうかというと周囲は必ずといっていいほど苦笑したものだ。 「シャレにならねーぞ」 そう言って愛用の銃で後頭部を遠慮なく殴ってきたのは スパルタ家庭教師、リボーンだったと記憶している。 シャレにならないってどういうことだよと 痛みで喚くと、ため息とともに赤子の彼は部屋を後にしたのだった。 「ねえスクアーロさん。オレって猫みたいに見えます?」 大きな肩に頭をもたげて、真横にある恐ろしく整った顔を見上げた。 愛しい恋人の表情は、この角度からではあまりよく読み取ることができない。 けれどそのきれいな眉が、ぴくりと跳ね上がるのが見て取れた。 「はぁ?」 「オレってよく猫みたいだって言われるけどそう見えます?できればもっと格好いいのがいいなあ」 呆れたような視線が送られてくる。 それを心地よく受け止めて、にこり、微笑んだ。 開いた窓から蒸し暑い風が吹き込んでくる。 なにもこんな暑い時期に暑苦しく二人でくっつかなくてもと思うかもしれないが、 そもそもスクアーロは先ほど綱吉が悲鳴と共にはぎとるまで、分厚い黒コートを着ていたのだ。 「…どんな動物のこと言ってンだぁ?」 「例えば…豹とか」 かくっ、とスクアーロの首が下がる。 あきれ果てて言葉も出ない様子のスクアーロを見つめつつ、 綱吉は言葉を続けることにした。 「だってオレ猫みたいじゃないでしょう。どう見たって!」 そう言ってぷう、と頬を膨らませるともともと幼い輪郭がいっそう愛らしく見える。 「…あー……」 チラリと視線が送られてきて、綱吉はスクアーロの灰色の目を覗き込んだ。 「あーあ。  スクアーロさんまでオレの主張を馬鹿にして」 眉根に皺をよせて、もともと近かった顔をもっと近く、すり寄せる。 すぐ目の前に戸惑う顔があった。綱吉が本気で怒っているとでも思っているのだろうか。 かの凶暴な家庭教師は未だ部屋に帰って来そうにない。 「やさしくしてくれたら許してあげます」 「…テメェは年中猫気分か」 むせかえる程の熱が胸の奥にこみ上げてくる。 決してやさしいとは言えないキスを、黙って受け止めることにした。 End.
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