ひったくり

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 栄伍は連続ひったくり犯だ。バイクに乗って背後から近づき、通りすがりにひったくる。悪い事だが、お金がないからやらなければならない。それを続けるためには、警察に捕まってはならない。 「ん?」  ある日、バイクで走っていた栄伍は、路上を歩いている若い女性を見つけた。その女性は、茶色いショルダーバッグを持っている。後ろをあまり気にしていないようだ。こいつなら狙えそうだ。 「よし、この女、狙おう!」  栄伍は背後から近づいた。それでも、女は気づいていない。絶好のチャンスだ。栄伍は後ろから追い越そうとした時、手を伸ばした。そして、女からショルダーバッグをひったくった。 「よっしゃ!」  女はひったくりに気づいた。だが、足とバイクではバイクに勝ち目はない。だが、追いかけようとする。 「待てー!」  女は追いかけていく。だが、あっという間に引き離されてしまう。女は必至だが、全く追いつけない。 「追いつけるもんなら、追いつてみろー!」  栄伍は笑って角へと消えていった。女は息を切らして、絶望している。どうしよう。ショルダーバッグを奪われてしまった。  栄伍は角を曲がって、ほっとした。もう女はいない。どうやら逃げ切ったようだ。これで安心だ。栄伍は安心して、深く深呼吸をした。 「よし! いなくなったな! どんなもんだい!」  栄伍は前を見た。住んでいる高層マンションが見える。早くマンションに戻って、中身のお金を取らないと。ショルダーバッグを持っていると、ひったくりと思われるだろうから、早くマンションに隠さないと。 「さて、家に帰ってお金を出そう」  栄伍はマンションに向かってバイクを走らせた。いつものように順調だ。この調子でまたひったくりをやろう。そして、生計を立てよう。  だが、マンションまであと少しまで来た時、後ろから大きなバイクがやって来た。栄伍は気になった。この辺りでは見かけないバイクだ。何だろう。だが、栄伍はすぐに気にしなくなった。偶然、ここに来た奴だろう。何も気にする事はない。 「あれ? 何だこのバイクは?」  栄伍はマンションとは別の道を走りだした。あのバイクにつけまわされているような気がしたからだ。そのバイクは猛スピードで栄伍のバイクに迫ってくる。だが、栄伍も必死で逃げている。 「しつこいな」  だが、栄伍はある事に気づく。そのバイクを運転している人がいない。つまり、ひとりでに動いているのだ。まさか、おばけが運転している?栄伍は少しゾッとなった。 「えっ、人が乗ってない!」  その後もバイクは猛スピードでやってくる。このままでは追い付かれてしまう。まずい。早くどこかの道に逃げないと。  栄伍は左に右にカーブした。だが、バイクはそれでも追いかけてくる。まるで俺を追いかけているようだ。 「何だあのバイク、追いかけてるぞ!」  その時、栄伍は気づいた。ひったくりをしたから、つけが回って来たのでは? 次第に栄伍は感じ始めた。ひったくりなんかしなければよかった。 「ま、まさか!」  バイクはさらにスピードを上げる。栄伍もスピードを上げて逃げるが、それでもやってくる。 「助けてくれー!」  左にカーブしようとしたその時、栄伍は転倒した。まさか、転倒するとは。 「うわっ・・・」  倒れた先には、警察がいた。どうしてこんなにいいタイミングで警察がいるんだろう。俺はついてないのか? 「大丈夫ですか?」 「は、はい・・・」  栄伍は戸惑っている。早くここから離れないと捕まってしまう。 「やっぱりお前か!」  だが、警察は栄伍が誰なのか知っているようだ。ここ最近、この辺りに出没するひったくり犯だ。やっと捕まえた。早く警察に連行しないと。 「お前って・・・」 「今さっき、女性のバッグをひったくっただろ?」  栄伍は驚いた。まさか、知っているとは。でも、どうしてあんなに早くわかったんだろう。まさか、あの女が通報したんだろうか? 「な、何で知ってるんですか?」 「今さっき、あの女性から、ひったくりに遭ったって連絡があったんだ。お前だろ?」  やはりそうだった。栄伍は頭の中が真っ白になった。あんなに早く通報できるとは。栄伍は肩を落とした。 「そ、そうです・・・」  栄伍は戸惑っている。まさかばれてしまうとは。 「いいから交番まで来い!」 「は、はい・・・」  だが、栄伍はある事に気が付いた。追い回た末に、自分の近くで停まったバイクが、そこにないのだ。もうどこかに行ったんだろうか? 「あれ? ここにあったバイク・・・」  と、目の前にはひったくりに遭った女がいる。女は笑みを浮かべている。栄伍は呆然としている。 「あっ、こいつ!」 「えへへ・・・」  と、栄伍は女のスカートからタヌキの尻尾が出ているのが目に入った。まさか、こいつが化けタヌキだったとは。そう、あのバイクは、その女が化けていた物だった。栄伍は肩を落とした。
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